施設名 阿木川ダム あぎがわだむ
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場所 恵那市東野字山本
形式 中央土質遮水壁型ロックフィルダム
規模 堤高101.5m
設置者 (独)水資源機構
完成年 1990(平2)年
概要    阿木川を含めた木曽川の中・下流域における洪水調節(治水機能)と名古屋市・知多半島地域や岐阜県東濃地域の水源確保(利水機能)を兼ね備えた多目的ダムである。屏風山断層により上昇隆起した屏風山山塊を下刻した阿木川がその北側斜面(断層崖)を横切る直前にあたる位置に堤体が設けられており、濃飛流紋岩のNOHI-1を構成する恵那火山灰流シートとそれを貫く花崗閃緑斑岩Ⅰからなる岩盤上に建設されている。これらの岩盤は屏風山断層に近接した位置にあるとはいえ、その直接的な影響を受けているわけではなく、当初は重力式コンクリートダム型式として設計された。しかし、具体的な堤体設置予定地においては堤体を支えるには十分に堅硬ではなかったために、ダム堤体の体積を大きくして安定性を求めるためロックフィルダム型式に変更されて建設された。ダムで塞き止められて誕生した湛水面積158.0haの「阿木川湖」は2005(平17)年にダム湖百選に選定され、水質保全のために設けられている湖上の大噴水もダム湖景観に花を添えている。
ジオ点描    “屏風山”という名称やそれに由来する“屏風山断層”という名称は、恵那市街地からみて南側に屏風のように立ちはだかる急崖を作る山地の景観から呼ばれるようになったとされている。阿木川はその屏風となる壁を南側から突き破るように流れ出ており、阿木川ダムはその突き破られた屏風の穴を人間が修復するために作った“壁”のように見える。
写真 恵那市東野にある阿木川ダムの堤体
(撮影:鹿野勘次)
写真 阿木川ダムの堤体を作る花崗閃緑斑岩の岩塊
(撮影:小井土由光)
屏風山断層
屏風山断層は、阿寺断層系の南東端にあたる中津川市馬籠(まごめ)付近から、それに直交する東北東~西南西方向に瑞浪市南西部にかけて全長約32kmにわたり延びる。断層の南側には屏風山(標高794m)を最高峰とする標高750mほどの屏風山山塊が続き、その北側の急斜面が断層崖に相当しており、この壁が大地に作られた巨大な屏風のように見えることからその名がある。屏風山山塊を隆起させる縦ずれ運動は、南側の山塊が北側へ乗り上げる逆断層として起こり、そのため断層は山塊側から崩れてくる堆積物の下に埋もれてしまい、断層自体は限られた地点でしか観察できない。観察できる場所では、断層面が水平面から約60°の傾斜角で南へ向かって傾いており、その上側にある基盤の伊奈川花崗岩が下側にある瀬戸層群の土岐砂礫層の上に乗り上げている。なお、横ずれ運動もしており、断層を横切る河川流路に折れ曲がりがみられる。
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
恵那山火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南縁部において、恵那山(標高2191m)から富士見台高原へ至る県境稜線部周辺のほか、恵那~岩村地域などに広範囲に分布する。濃飛流紋岩のNOHI-1の主体をなす火山灰流シートであり、形成時には東西約35km、南北約25kmの範囲に分布していたと推定され、最大層厚は1,000mを超える。恵那~岩村地域でコールドロンを形成しており、そこを給源の1つとして巨大なシートを形成した。大きくみると下部が流紋岩質(SiO₂=76%前後)の、上部が流紋デイサイト質(SiO₂=73%前後)の溶結凝灰岩からなり、それに合わせて斑晶量やその容量比が変化する傾向が認められる。ただし、コールドロン内部では上下位関係の変化としてはわからない。粗粒の結晶破片に富むことや多量の石質岩片を含むことなどの特徴をもつ。
花崗閃緑斑岩Ⅰ
濃飛流紋岩の岩体南縁部だけにいくつかの不規則な外形を持つ径1~10㎞ほどの岩体として分布する。NOHI-1およびまれにNOHI-2を貫き、伊奈川花崗岩および苗木花崗岩に貫かれる。NOHI-1の噴出・定置に関連した恵那コールドロンの内部(殿畑岩体)あるいは北縁部(奈良井岩体)においては北東~南西方向に伸びた形をもって分布し、そこからはずれた地域では岩株状の岩体(高土幾山(たかときやま)岩体)として分布するほか、これらの周辺に小岩体が分布する。苦鉄質鉱物を比較的多く含む花崗閃緑岩質の岩石からなり、長径2~3㎝の大きな斜長石やカリ長石の斑晶を多く含み、全斑晶の容量比は40~60%である。石基は径0.5㎜以下の石英・斜長石・カリ長石・苦鉄質鉱物からなり、微花崗岩質組織あるいは微文象構造を呈する。細粒周縁相をほとんどともなわず、周囲の濃飛流紋岩に対しても熱変成作用を与えていない。

地質年代