施設名 乗鞍スカイライン のりくらすかいらいん
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場所 高山市奥飛騨温泉郷平湯峠~乗鞍岳畳平(たたみだいら)
形式 -
規模 全長14.4km
設置者 岐阜県
完成年 1973(昭48)年
概要    国道158号の平湯トンネルの真上にあたる旧国道158号の平湯峠(標高1,684m)を起点とし乗鞍岳山頂付近の畳平(標高2,702m)を終点とする山岳観光道路である。最初は1941(昭16)年に軍用道路として敷設され、第二次大戦後の1948(昭23)年に岐阜県へ編入され、岐阜県道路公社が拡幅改良(2車線化)工事をして有料道路として開通させた。平湯峠付近は美濃帯堆積岩類からなるが、それ以外はほぼ全線にわたり乗鞍火山の噴出物の上を走っている。日本一高い場所を走る雲上のドライブウェイとしてすばらしい山岳景観と貴重な自然を気軽に楽しめるだけでなく、火山体の中を走ることで身近に火山地形が観察できる場所となっている。こうした山岳ドライブを楽しめる反面、多くの車が乗り入れたり、多くの人間でにぎわったりしたことで自然環境に及ぼす影響が危惧されるようになった。そのためいろいろな規制や対応がすすめられるようになり、2003(平15)年に無料開放に合わせてマイカー乗り入れが禁止され、日本の国立公園で初めて岐阜県による環境保全税が導入された。
ジオ点描    乗鞍火山のおもに烏帽子火山から流れ出た溶岩の作る台地が比較的なだらかな地形を形成していること、その台地にたどり着くまでのかなり高所にまで主要国道が通っていたことなど山頂部付近まで道路を敷設できる条件が整っていたことで、この道路が山岳観光道路の代表となるほどになった。ただし、それらに最初に目をつけたのが軍事利用であったことも考慮しておく必要があろう。
写真 乗鞍岳山頂部付近における乗鞍スカイライン(手前:不消池、奥:鶴ヶ池)
(撮影:岩田 修)
写真 準備中
乗鞍火山
飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km³の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山、高天ヶ原・権現池火山、四ツ岳火山、恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
烏帽子火山
乗鞍火山のうち新期乗鞍火山としては最初の活動で形成され、千町火山の火山体が崩壊した北半分の地域に形成された火山体である。現在の四ツ岳(標高2751m)と恵比寿岳(標高2831m)~摩利支天岳(標高2872m)の2ヶ所を噴出中心とする標高2800~2900mの複合火山体(復元推定体積は約8km³以上)を形成していたと考えられている。おもに角閃石と輝石類を含む安山岩質の溶岩層からなる。


地質年代