施設名 岩屋ダム いわやだむ
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場所 下呂市金山町卯野原(うのはら)/乙原(おっぱら)
形式 傾斜土質遮水壁型ロックフィルダム
規模 堤高127.5m
設置者 (独)水資源機構
完成年 1976(昭51)年
概要    飛騨川支流の馬瀬川に洪水調節・灌漑・上水道・工業用水・発電などいろいろな目的をもって建設されたダムである。当初は電源開発が主目的であったこともあり、すぐ下流に重力式コンクリートダムの馬瀬川第二ダム(堤高44.5m)を同時に作り、そこを下池として夜間の余剰電力を利用して上池(本ダム)へ揚水した水を用いて、堤体の脇にある馬瀬川第一発電所において最大出力約29万kwの発電を行なっている。堤体は濃飛流紋岩の堅硬な溶結凝灰岩の分布域に建設され、それら(特にNOHI-4の高樽(たかだる)火山灰流シート)がダム堤体の石材にも利用されている。ダム形式は大容量の貯水(総貯水容量1億7,350㎥)を支えるために当初からロックフィルダム形式で計画されたと思われ、実際に断層破砕帯が堤体を横切る方向にあることが判明したことで浸透対策に留意して建設されている。誕生した人造湖「東仙峡金山湖(とうせんきょうかなやまこ)」は424.0haの湛水面積で、飛騨川流域最大の人造湖である。
ジオ点描    岐阜県内において濃飛流紋岩はかなり広大な面積を占めて分布している。それだけに堤体も湛水域もすべて濃飛流紋岩という単一地質体の内部にあるダムは多い。堤高が50mを越えるような大型ダムに限ってみても、岩屋ダム、朝日ダム(高山市朝日町)、秋神ダム(同)の3つもある。阿木川ダム(恵那市)も実質的に該当すると考えれば4つになる。
写真 金山町岩瀬にある岩屋ダムの堤体
(撮影:棚瀬充史)
写真 岩屋ダムが作る東仙峡金山湖の景観
(撮影:棚瀬充史)
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
溶結凝灰岩
火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。
高樽火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南部を除くかなり広範囲にほぼ連続して分布し、NOHI-4の主体をなす火山灰流シートである。層厚は約700mである。全体にきわめて均質な流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、径2㎜前後の自形性のよい石英結晶を多量に含むこと、基質中に細かな結晶片をあまりともなわず、組成のわりに苦鉄質鉱物(角閃石・黒雲母・不透明鉱物)と斜長石を多く含むことを特徴とする。長径5㎝前後の本質岩片を多量に含み、しばしば明瞭なユータキサイト構造を示す。石質岩片をほとんど含まない。


地質年代