施設名 大井ダム おおいだむ
地図 地図を見る
場所 恵那市大井町字奥戸/中津川市蛭川(ひるかわ)
形式 重力式コンクリートダム
規模 堤高53.4m
設置者 大同電力(関西電力㈱)
完成年 1924(大13)年
概要    木曽川水系における電源開発の端緒となった最初のダムであり、近年に建設されたダムと比べると小規模であるが、当時としては堤高が50mを超える大規模なコンクリートダムであった。堤体の建設と同時に右岸(北岸)下流側に付設された大井発電所は日本最初のダム式発電所であり、そこと堤体との間に1983(昭58)年には新大井発電所が増設されており、あわせて最大出力84,000kwの発電を行っている。堤体を支えている岩盤は濃飛流紋岩のNOHI-1に属する恵那火山灰流シートであり、そのすぐ上流側に広く分布する苗木花崗岩がいろいろな程度にマサ化するなどの風化作用を受けやすい岩石からなることに比べると堅硬な岩盤となっている。ダム建設に際して初めて機械化施工や本格的なボーリング調査などが行われ、本格的な地質調査が行われた最初のダムと言われている。このダムによって誕生した湛水面積141.0haの人造湖を利用した景勝地が恵那峡であり、2005(平17)年にダム湖百選に選定されている。
ジオ点描    木曽川の本流には岐阜県内だけをみてもほぼ連続して6つのダムが設置されている。このことはダムを設置できるほどの峡谷が美濃加茂周辺から上流へ向かって山岳地帯までつながっていることになり、最上流部までダムが1つもない長良川本流の流域とは明らかに異なる。それは山地部の隆起運動が相対的に木曽川(+飛騨川)流域で大きく、長良川流域で小さいことを意味する。
写真 東雲大橋から望む大井ダムと大井発電所(手前の白色の建物)と新大井発電所(堤体手前の灰色の建物)
(撮影:小井土由光)
写真 恵那市笠置町毛呂窪の東雲橋から望む大井ダムと大井発電所
(撮影:小井土由光)
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
恵那火山灰流シート
濃飛流紋岩の岩体南縁部において、恵那山(標高2191m)から富士見台高原へ至る県境稜線部周辺のほか、恵那~岩村地域などに広範囲に分布する。濃飛流紋岩のNOHI-1の主体をなす火山灰流シートであり、形成時には東西約35km、南北約25kmの範囲に分布していたと推定され、最大層厚は1,000mを超える。恵那~岩村地域でコールドロンを形成しており、そこを給源の1つとして巨大なシートを形成した。大きくみると下部が流紋岩質(SiO₂=76%前後)の、上部が流紋デイサイト質(SiO₂=73%前後)の溶結凝灰岩からなり、それに合わせて斑晶量やその容量比が変化する傾向が認められる。ただし、コールドロン内部では上下位関係の変化としてはわからない。粗粒の結晶破片に富むことや多量の石質岩片を含むことなどの特徴をもつ。
苗木花崗岩
中津川市苗木付近を中心に濃飛流紋岩の分布域の南部に広く分布し、中央部においても濃飛流紋岩の地下に広く伏在して分布する。濃飛流紋岩の少なくともNOHI-5までを貫き、NOHI-3、NOHI-4およびNOHI-5と火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩および角閃石含有黒雲母花崗岩からなり、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。
恵那峡
1924(大13)年に木曽川水系で最初に作られた大井ダムが木曽川を堰き止めて作った人造湖を利用した峡谷であり、ダム湖百選にも選ばれている。約12kmにわたる湛水域の両岸に露出する岩盤は苗木花崗岩であり、花崗岩の方状節理と適度な風化作用によりもたらされた奇岩に、屏風岩、軍艦岩、獅子岩、鏡岩などいろいろな名称がつけられている。それらと湖面がつくりだす景観を遊覧船から眺められることで人気が高い。
マサ化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。
地質年代