施設名 小里川ダム おりがわだむ
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場所 瑞浪市陶町(すえちょう)水上(みずかみ)/恵那市山岡町田代
形式 重力式コンクリートダム
規模 堤高114.0m
設置者 国土交通省中部地方整備局
完成年 2004(平16)年
概要    土岐川支流の小里川に洪水調節・環境維持・発電などを目的として建設された国直轄の特定多目的ダムである。とりわけ小里川流域において頻繁に氾濫が繰り返されていたことから、当初はその防止を目的として計画されたダムである。比較的新しい時期に建設された大型ダムの多くがロックフィルダムであるのに対して、数少ないコンクリートダムである。ダムの堤体を支える岩盤は伊奈川花崗岩であり、表層部は風化していろいろな程度にマサ化していることで堅硬な状態にはないから、そうした部分を削り取ることで脆弱性といった地質上の特性を特別に考慮するような環境にはなかったのであろう。また、ロックフィルダム型式を採用するには近傍での原石山や骨材の確保が困難であったと思われる。このダムは国土交通省により地域に開かれたダムに指定され、ダム堤体の内部だけでなく下流側の堤外も一般に開放している点はユニークな存在である。このダムによって誕生した湛水面積55.0haの人造湖は「おりがわ湖」と命名されている。
ジオ点描    東濃地方に分布する花崗岩類は基本的に広くマサ化を受けているが、それらを削り込んで流れている河川の峡谷部は相対的に堅硬な岩盤が露出している場所ということになる。とはいえ花崗岩はマサ化ばかりでなく、割れ目(節理)も多くなっており、かなり条件が揃わないとダムの築堤にはあまり向かない環境であることに変わりはなく、コンクリートダムの築堤にはなおさら不向きな環境である。
写真 下流側から見た小里川ダムの堤体
(撮影:鹿野勘次)
写真 上から見た小里川ダム堤体
(撮影:小井土由光)
伊奈川花崗岩
中部地方の領家帯を中心に美濃帯南部も含めてきわめて広い範囲に分布する巨大な花崗岩体であり、そのうち岐阜県内には濃飛流紋岩の南縁部においてそれとの接触部にあたる浅部相が広く分布し、多くの地域でNOHI-1およびNOHI-2を貫いており、それらと火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。ただし、県南東縁の上村(かみむら)川流域では領家帯構成岩類の天竜峡花崗岩の周辺において三都橋花崗岩と呼ばれている深部相が分布するが、ここでは区別せずに扱っている。斑状あるいは塊状の粗粒角閃石黒雲母トーナル岩~花崗岩からなる。この花崗岩は、古典的な「地向斜-造山運動」論において造山帯中核部の地下深部で形成された花崗岩体の典型例と考えられていたが、1960年代に地表に噴出・堆積した濃飛流紋岩を貫いていることが発見され、地表近くのきわめて浅所までマグマとして上昇してきたことになり、それまでの火成活動史の考えを根底から覆えし、塗り替えることとなった。
マサ化
地下で固結した花崗岩が地表に露出したことで気温の変化により岩石の表面で膨張収縮をわずかながらでも繰り返し、岩石中の鉱物が互いに接している完晶質岩であるために膨張率の違いが鉱物単位で歪みを生じ、ばらばらにされて砂状に破壊されていく現象である。もともとは「真砂土(まさど・まさつち)」という園芸用土壌の用語として使われているが、それをもたらす風化作用に拡大して使われるようになっている。



地質年代