施設名 上大須ダム かみおおすだむ
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場所 本巣市根尾上大須
形式 中央土質遮水壁型ロックフィルダム
規模 堤高98.0m
設置者 中部電力㈱
完成年 1995(平7)年
概要    夜間の余剰電力を利用して下部貯水池(下池)の水を上部貯水池(上池)に揚水して貯水し、昼間の発電に備える揚水発電方式をとるために建設されたダムであり、そのうちの下池として根尾川支流の根尾東谷川沿いに建設されたダムである。ダムの堤体は美濃帯堆積岩類砂岩が広く分布する地帯に建設されており、堤体の岩盤強度としてそれほど大きな問題があるわけではなく、堤体材となる原石山が近くで確保できることで最も経済的なロックフィルダムの型式で建設されたと思われる。板取川源流部に建設された上池となる川浦(かおれ)ダムとの中間の位置にあたる地下約350mに奥美濃水力発電所を設置して最大150万kwの揚水発電を行なっている。
ジオ点描    揚水発電用として上池の川浦ダムと対をなすが、下池はほぼ直線的に延びるV字谷を堰き止めるだけであり、上池に比べてかなり単純な地質・地形条件の建設場所と考えてよい。そうした良好な立地条件がロックフィルダム型式というダム型式で建設された理由となりそうだが、この立地条件は貯水容量などの制約された立地条件下にある上池の機能を補う役目も果たしているようである。
写真 根尾上大須にある上大須ダムの堤体
(撮影:小井土由光)
写真 上大須ダム堤体上を通る道路
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
川浦ダム
長良川支流の板取川に流れ込む西ヶ洞谷(にしがほらたに)川上流部にあり、奥美濃酸性岩類の「明石谷(あけしだに)岩体」を構成する明石谷火山岩類の分布域に建設されている。揚水発電用の上池として、下池の上大須(かみおおす)ダムとともに建設されたダムであるが、美濃帯堆積岩類の分布域に建設された上大須ダムとは異なりアーチ式コンクリートダムであり、堤体を支える岩盤が堅硬で安定したものであったためと考えられる。なお、貯水位を維持するために主ダムの脇に鞍部ダムが同時に建設されている。ただし、ダム湖周辺には発電所関係者以外は立入禁止となっている。
砂岩
美濃帯堆積岩類において、海洋プレートが大陸縁辺に近づき、海溝で沈み込んでいく際に陸域から供給される砕屑物である。それぞれが単独の地質体を作る場合もあれば、互層をなす場合もあり、前者においては厚い砂岩層としてしばしば産する。これらの多くは海底地すべりにより混濁流としてもたらされたタービダイトを形成している。


地質年代