地層名 苦鉄質貫入岩類【Gmf】 くてつしつかんにゅうがんるい
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代表地点 高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根東方
形成時期 時代未詳
概要    奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、一重ヶ根地区の東方山腹において、一重ヶ根層あるいは岩坪谷層を貫いて分布する。おもに中粒で等粒状のハンレイ岩と細粒緻密な輝緑岩からなり、閃緑岩質の岩相もともなわれる。変質作用が著しく、全体に緑色を帯び、破砕されていることが多い。これらとは性質や産状が異なるが、飛騨外縁帯構成岩類美濃帯堆積岩類手取層群などと断層で接する場合には、しばしば超苦鉄質岩(U)が介在してともなわれる。比較的大きな岩体は今見地域の北方山腹あるいはその西方延長の高山市上宝(かみたから)町赤桶南方山腹に分布するが、小規模な岩体は各所に見られる。ほとんどの岩石は含まれるカンラン石が水と反応して蛇紋石に変化し、蛇紋岩化している。
文献
  • 原山 智(1990)上高地地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,175頁.
  • 写真 高山市奥飛騨温泉郷栃尾におけるはんれい岩
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 高山市奥飛騨温泉郷栃尾における蛇紋岩化した超苦鉄質岩
    (撮影:鹿野勘次)
    飛騨外縁帯構成岩類
    飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
    一重ヶ根層
    奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、一重ヶ根地区の岩坪谷下流部、その東方山腹、一法水(いっぽうすい)地区の東方山腹に分布する。層厚は500m以上で、おもに流紋岩質の凝灰岩、凝灰質砂岩および泥岩などからなる。シルル紀を示す三葉虫や放散虫の化石を含み、さらには現時点で日本最古の時期を示すコノドント化石(オルドビス紀後期)が発見されている。
    岩坪谷層
    奥飛騨温泉郷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、一重ヶ根地区東方の岩坪谷流域からその北側山腹にかけて分布し、層厚は500m以上で、玄武岩質の溶岩や火砕岩類からなる。溶岩には枕状溶岩が確認できる。化石が含まれていないため形成時代は不明であるが、現時点で日本最古の化石を含む一重ヶ根層(オルドビス紀~シルル紀)の下位層であり、それとの間でそれほど大きな時間間隙が想定されないことから、オルドビス紀の地層と推定されており、現時点では日本最古の地層の一つとなる。
    美濃帯堆積岩類
    飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。
    手取層群
    手取層群は、福井県東部から石川県南東部、岐阜県北部、富山県南部へかけての地域に分かれて分布し、中生代のジュラ紀前期から白亜紀前期にかけての時代に形成された海成~陸成の地層である。おもに砂岩・泥岩・礫岩などの砕屑岩類からなり、恐竜などの爬虫類化石を産出することで知られる。大きくみると浅海成層から陸成層へと移り変わっていることで、これまでは3つの亜層群(九頭竜・石徹白(いとしろ)・赤岩亜層群)に区分されていた。しかし、これら3亜層群の区分に関しては、形成時代の見直しが化石(特にアンモナイト化石)に基づいて進められてきたことで、堆積環境の変遷も含めていくつかの見解が示されており、それにともなっていくつかの層序区分の考えが示されてきた。ここではこれまでに一般的に用いられてきた3亜層群の名称をそのまま用い、形成時期に重点をおいた区分として、九頭竜・石徹白亜層群の境界をほぼ中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4,550万年前)、石徹白・赤岩亜層群の境界をほぼ白亜紀前期の約1億2,500万年前として表現する。ただし、分かれて分布する個々の地域すべてから時代決定に有効な化石が産出するわけではなく、年代測定の問題も含めて課題の残された地域もあるため、ここでは現段階での資料に基づいて区分し、時代不明の未区分層(Tu)として扱う地域もある。岐阜県地域において区分できる地域では、九頭竜亜層群は分布せず、石徹白・赤岩亜層群が分布し、それぞれ石徹白亜層群相当層、赤岩亜層群相当層として記述する。
    超苦鉄質岩
    含まれている鉱物組成により火成岩を区分した場合、カンラン石、輝石、角閃石などの有色鉱物(苦鉄質鉱物)が70%以上を占める岩石で、おもに含まれる鉱物によりカンラン岩、輝岩、角セン石岩などに分けられる。これを化学組成で区分すると、SiO₂含有量が約45%より少ない岩石にほぼ相当し、この場合には超塩基性岩と呼ぶ。
    地質年代