粗粒ピンク花崗岩
飛騨市神岡町東方~南方一帯から、高原川および金木戸(かなきど)川流域に広く分布し、これまで「船津花崗岩類」の名で知られてきたものである。おもに粗粒塊状で等粒状~斑状の花崗岩~花崗閃緑岩からなり、淡紅色~赤色のカリ長石を含むことを特徴とし、しばしば閃緑岩~トーナル岩などのやや苦鉄質の岩相と混在する。一部で変形・再結晶などの変成作用を受けており、とりわけ神岡町市街地付近では著しく圧砕作用を受け、片理を示す。同様の変成した花崗岩は飛騨帯各地に分布する。いっぽう、高山市宮川町打保(うつぼ)付近に分布する打保岩体では変形・再結晶があまり見られないことから、同じ岩相を示す岩石でも形成時期にかなり幅があり、2億4000万年前ごろの広域変成作用の時期を挟んで新旧異なる時期の岩相を含んでいる。
片麻状構造
等粒状完晶質の岩石において、片理をもつ有色鉱物に富む優黒質部と粗粒の無色鉱物に富む優白質部の互層からなる縞状構造が顕著になったもの。必ずしも片麻岩に使う用語ではなく、花崗岩の組織を表現する場合にしばしば用いられる。
トーナル岩~花崗閃緑岩
高原川支流の金木戸川流域において金木戸付近より上流域に分布し、北東方へ飛騨山脈の主稜線から富山県側の黒部川上流域へかけての地域に広がる。おもに中粒塊状ないし一部に流理構造のある角閃石・黒雲母トーナル岩~花崗閃緑岩からなる。流理構造が顕著なものは金木戸川・中ノ俣川合流点下流や宮川町打保(うつぼ)付近の打保岩体縁辺部にみられ、含まれる角閃石や斜長石が自形をなしていることから、変形構造を示しているわけではなく、2億4000万年前ごろの広域変成作用より後に形成されたと考えられている。これらに対して、高山市清見町楢谷の北西方域に分布する岩体は粗粒で淡紅色カリ長石を含み、圧砕組織など変形構造を持ち、より古期の岩相と考えられている。
飛騨外縁帯構成岩類
飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
荒城川層
丹生川町北部~国府町地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、高山市松本町付近から丹生川町北部を経て、上宝(かみたから)町本郷付近まで分布する。おもに安山岩質~玄武岩質の溶岩や火砕岩類からなり,泥岩層、砂岩層、石灰岩層をともない、層厚は約1,100mである。全体に弱い変成作用を受け、分布域の南西部では片理が明瞭となり、結晶片岩~千枚岩になっている。中部層と上部層には石炭紀前期を示すサンゴ化石などが含まれるが、下部には時代を示す化石が含まれていない。奥飛騨温泉郷地域の一の谷層とおおよそ同時期の堆積物であり、岩相は異なるが、ともに浅海陸棚の堆積物である。
森部層
丹生川町北部~国府町地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の一つで、高山市中切から丹生川町森部を経て、上宝(かみたから)町堂殿(どうでん)にかけて分布する.泥岩、泥岩砂岩互層、砂岩などからなり、礫岩や石灰岩をともなう陸棚成堆積物であり、層厚は1,430m以上と厚い。基底部に花崗岩の礫をふくむ礫岩がある.一部で変成作用を受け、片理が明瞭である。フズリナやサンゴの化石を含み、荒城川層(古生代石炭紀)を不整合に覆うと考えられている。
熱変成作用
既存の岩石が熱いマグマと接触して岩石組織や組成を変えられてしまう現象で、接触変成作用ともいう。この作用で形成された岩石を熱変成岩あるいは接触変成岩といい、これを「ホルンフェルス」と呼ぶこともある。これはドイツ語で、ホルン=角のように固くなったフェルス=様子を意味しており、もともとは泥岩を源岩とする熱変成岩に用いられた用語であるが、すべての熱変成岩に用いられることが多い。熱をもたらすマグマは接触した岩石に熱を奪われて冷却していくから、熱変成作用は花崗岩体を形成するような大きな容量をもつマグマの周辺で起こりやすい。
地質年代