花崗岩質片麻岩
一般には飛騨変成岩類中に幅数cm~数mの脈状ないし不規則なプール状の優白質部として産し、小規模でも飛騨帯各地に広く分布する。岐阜県内では白川村地域から富山県境の水無山(標高1506m)稜線付近に比較的広く分布する。ミグマタイト構造を形成し、粗粒~細粒、塊状~片麻状組織をなし、再結晶組織を示す。白川村周辺では黒雲母片麻岩等の岩片を含み、県最北部の万波(まんなみ)川から小鳥(おどり)川以北の地域では縞状片麻岩中に脈状に産し、青灰色のカリ長石を多く含むことから“灰色花崗岩”と呼ばれる。飛騨市古川町野口から河合町角川(つのかわ)へかけての宮川河床では粗粒の花崗岩~花崗閃緑岩質片麻岩が分布し、一部は透輝石や角閃石を含み、伊西ミグマタイトとの中間的岩相を示すこともある。
伊西ミグマタイト
神岡町伊西地域から神岡鉱山周辺、神岡町西部の流葉山(ながれはやま)(標高1423m)周辺などにややまとまって分布するが、一般には石灰岩~石灰珪質片麻岩にともなって幅数cm~数mの脈状ないし不規則なプール状に小規模な岩体として分布する。角閃岩や角閃石片麻岩の岩片を包有し、ミグマタイト構造を作り、緑色短柱状の透輝石(~サーラ輝石)を含む粗粒~細粒、塊状~片麻状組織の珪長質岩で、神岡付近ではカリ長石に富み、当初「伊西閃長岩」と呼ばれたが、岩相変化が大きく、神岡鉱山の技術者により産状に基いて伊西ミグマタイト(または伊西岩)と呼ばれるようになった。
神岡鉱山
鉱山の歴史は古く、採掘は奈良時代に始まる。1874(明7)年に当時の三井組が本格的な開発をはじめ、近代的な手法により大規模な採掘がなされ、約130年間の総採掘量は7,500万トンにも達している。一時は東洋一の鉱山として栄えたが、2001(平13)年6月に鉱石の採掘を中止した。飛騨帯構成岩類の飛騨変成岩類のうち、おもに結晶質石灰岩を火成岩起源の熱水が交代したスカルン鉱床を稼行対象とした鉱山で、栃洞(とちぼら)坑、茂住(もずみ)坑、円山(まるやま)坑などの鉱床がある。亜鉛鉱石の主要鉱物である閃亜鉛鉱に含まれるカドミウムを原因とする公害病「イタイイタイ病」が下流域の富山県神通川流域で大規模に発生したことはよく知られている。また、茂住坑の跡地はスーパーカミオカンデとしてニュートリノ観測装置に利用されている。なお、2007年に日本地質学会により「日本の地質百選」に選定されている。
捕獲岩
火成岩の中に含まれる別種の岩石片で、英語名をそのまま使いゼノリスという場合もある。その火成岩と同じ成因をもつ同源捕獲岩(オートリス)と成因的に無関係の外来捕獲岩に分けられる。
石灰岩
一般に縞状片麻岩の片理と調和的な岩体として飛騨帯の各地に広く分布するが、岐阜県内では小鳥(おどり)川流域や宮川流域にまとまって分布する。おもに石灰岩(大理石)からなり、単斜輝石片麻岩、石灰珪質片麻岩などをともなう。石灰珪質片麻岩と構成岩石の種類にあまり差異はないが、石灰岩の量が多い岩相として区別している。神岡町の高原川流域では閃緑岩質~トーナル岩質片麻岩中にレンズ状~薄層として産し、その他の地域でも花崗岩質片麻岩・ミグマタイト質花崗岩類中の小規模なレンズや層状岩体として分布する。
変閃緑岩/閃緑岩質片麻岩
飛騨帯構成岩類において角閃石に富む深成岩のうち、長さ20~30cmにも及ぶ巨晶からなる斑れい岩よりやや細かい中~粗粒の結晶からなる閃緑岩が変成作用を受けたものが変閃緑岩と呼ばれ、それらよりさらに強い変成作用を受けて片麻岩となったものが閃緑岩質片麻岩と呼ばれる。
地質年代