火山名 新期御嶽火山 しんきおんたけかざん
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代表地点 -
形成時期 更新世後期(約9万年前~約2万年前)
概要    御嶽火山において古期御嶽火山の活動終了後に約30万年にわたる長い静穏期を経て始まった活動で、現在の御嶽火山の中央部を構成する火山体を形成した。それらは活動の前半に形成された継母岳(ままははだけ)火山群と後半に形成された摩利支天(まりしてん)火山群に分けられ、両者はほぼ連続的に起こったようであるが、噴出物の性質は明瞭に異なる。これらの活動では「新期御嶽テフラ層」と呼ばれる大量の降下火砕堆積物を噴出しており、有効な指標となる広域テフラとして中部・関東地方に広く火山灰層を飛ばしており、隣接する乗鞍火山がおもに溶岩を流出させていることと対照的な活動をしている。なお、その活動経過については、山麓部での降下火砕堆積物の層序解析などから異なる見解も出されている。
文献
  • 山田直利・小林武彦(1988)御嶽山地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,136頁.
  • 写真 飛騨頂上 ~継子岳稜線より望む剣ヶ峰方面と噴気(2015年8月撮影)
    (撮影:棚瀬充史)
    写真 準備中
    御嶽火山
    岐阜・長野県境にあって南北約20km、東西約15kmの範囲に広がる山体をなす。それぞれ数万年ほどの活動期間をもつ古期御嶽火山と新期御嶽火山からなり、両者の間に約30万年にわたる静穏期があり、現在も約3万年にわたる静穏期にあたっている。
    古期御嶽火山
    御嶽火山の現在の山体よりも一回り大きな火山体をなして、約80km³におよぶ噴出物からなる成層火山が形成されていたと考えられている。新期御嶽火山の活動が始まるまでの約30万年におよぶ静穏期にその主体は崩壊してしまい、その上に新期御嶽火山の噴出物が覆ってしまったために、その全容はよくわかっていない。その山麓にあたる部分が、現在の山体の西側にあたる上俵山(かみだわらやま)(標高2077m)西斜面や北側にあたる秋神川上流域などに残されている。残存する部分から復元された火山岩類は、活動前期のおもに降下火砕堆積物や火砕流堆積物からなるテフラで構成されているテフラステージと、活動後期のおもに溶岩層で構成されている溶岩ステージに分けられており、組成は玄武岩質からデイサイト質まで幅広い。
    継母岳火山群
    新期御嶽火山の前半に活動した火山群で、莫大な量の流紋岩質軽石の噴出で始まり、それにともない古期御嶽火山の山体中央部が陥没してカルデラが形成され、そこを埋めるように標高2900mほど、推定体積約50km³の山体が形成された。それらはおもに流紋岩質~デイサイト質の厚い溶岩や火砕流堆積物などで構成されており、現在は継母岳(標高2867m)からその西方へ連なる県境尾根周辺に残されている。この時期に噴出した火砕物が大量に木曽川流域に供給されて形成された堆積物が木曽谷層であり、大量の軽石が含まれる砂層として中~下流域で容易に識別されている。
    摩利支天火山群
    新期御嶽火山の後半に活動した火山群で、前半の継母岳火山群の活動に引き続いて始まり、約10km³の安山岩質の噴出物を噴出して8つの成層火山をほぼ南北に重複するように形成し、現在の御嶽山頂上付近の地形をつくった。それらのうち末期の火山体が火口を明瞭に残している。この時期に発生した大規模な岩屑なだれ-泥流堆積物が木曽川泥流堆積物であり、山体の北東山麓から各務原市付近まで約200kmを流下している。最近の約2~3万年間は静穏期にあたっているが、その中でも最近の約6000年間に少なくとも5回の水蒸気爆発を起こしており、最新の爆発が1979年のものである(事項解説『災害』の項目「御嶽火山噴火」を参照)。
    乗鞍火山
    飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km³の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山、高天ヶ原・権現池火山、四ツ岳火山、恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
    地質年代