火山名 乗鞍火山 のりくらかざん
地図 代表的地点を見る
代表地点 -
形成時期 更新世中期~完新世(約128万年前~現在)
概要    飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km³の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山高天ヶ原・権現池火山四ツ岳火山恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
文献
  • 中野 俊・大塚 勉・足立 守・原山 智・吉岡敏和(1995)乗鞍岳地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,139頁.
  • 写真 高山市街地から望む乗鞍岳全景
    (撮影:岩田 修)
    写真 準備中
    千町火山
    乗鞍火山のうち古期乗鞍火山として形成された火山体であり、標高3000mを越える円錐形の山体を形成していたと考えられている。復元推定体積が約16km³で、おもに安山岩質の溶岩層からなり、デイサイト質の溶岩層をともなう。現在はその北半分が崩壊してしまい、最高峰の剣ヶ峰(標高3026m)付近から千町ヶ原へ向けて延びる千町尾根の北側にみられる急崖がその崩落崖であると考えられている。残存している南半分のなだらかな山体面は主体をなす溶岩流の原面をほぼそのまま残している。
    烏帽子火山
    乗鞍火山のうち新期乗鞍火山としては最初の活動で形成され、千町火山の火山体が崩壊した北半分の地域に形成された火山体である。現在の四ツ岳(標高2751m)と恵比寿岳(標高2831m)~摩利支天岳(標高2872m)の2ヶ所を噴出中心とする標高2800~2900mの複合火山体(復元推定体積は約8km³以上)を形成していたと考えられている。おもに角閃石と輝石類を含む安山岩質の溶岩層からなる。
    高天ヶ原・権現池火山
    乗鞍火山のうち新期乗鞍火山として剣ヶ峰(標高3026m)付近を中心に活動した火山体で、そのやや南東方にある高天ヶ原(標高2829m)付近から東方と南方へ流出したやや古い時期の活動と、権現池火口付近から北西方、南方、東方へ広がって流出した最も新しい時期の活動に分けられる。前者の活動では他の火山体に比べて溶岩層以外に火砕物がやや卓越することを特徴としている。後者の活動ではおもに複数枚の安山岩質やデイサイト質の溶岩流からなり、その明瞭な表面地形が認められる。完新世に入ってからはほとんどは小規模な水蒸気爆発が繰り返されたようである。
    四ツ岳火山
    乗鞍火山のうち新期乗鞍火山の初期に活動した烏帽子火山が浸食され、火山体が崩壊した後に形成された凹地を埋めて恵比寿火山とともに活動した火山で、四ツ岳溶岩ドームを構成し、そこから北方へ向かって平湯大滝付近まで流出した四ツ岳溶岩(体積約0.26km³)からなる火山体である。角閃石と輝石類を含む安山岩質の溶岩流からなる。
    恵比寿火山
    乗鞍火山のうち新期乗鞍火山の初期に活動した烏帽子火山が浸食され、火山体が崩壊した後に形成された凹地を埋めて四ツ岳火山とともに活動した火山で、恵比寿岳(標高2831m)から西方へ向かって流出した恵比寿溶岩(体積約0.5km³)だけからなる火山体である。角閃石と輝石類を含む安山岩質の溶岩で、溶岩流地形が明瞭に残されている。

    地質年代