火山名 白山火山【VH3】 はくさんかざん
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代表地点 岐阜・石川県境 御前峰
形成時期 更新世中期~完新世(約42万年前~現在)
概要    最高峰の御前峰(ごぜんがみね;標高2,702m)と剣ヶ峰(標高2,677m)、大汝峰(おおなんじみね;標高2,684m)をあわせて「白山三峰」といい、それらを中心とする安山岩質の溶岩、火砕流堆積物などからなる火山体である。ただし、山頂部付近でも標高2,400m付近まで基盤岩類が分布しており、それらの上にきわめて薄く噴出物が覆っているに過ぎない。加賀室火山(約42万~32万年前)、古白山火山(約13万~6万年前)、新白山火山(約4万年前以降)の3つの活動時期に分けられるが、前二者は現在の主峰から離れた周囲の尾根上に残っているだけで、ほとんどが削剥されてしまっている。とりわけ古白山火山は、現在の大汝峰の北側にあたる石川県側の地獄谷付近にあたる位置に標高3,000mに達する山頂をもつ成層火山体を形成していたと考えられている。新白山火山は現在の主峰を中心とした火山体を形成しており、岐阜県側では、約4,400年前に山頂付近の東側が大規模に崩落したことで馬蹄形の凹地が形成され、その崩落で発生した岩屑なだれによる堆積物が大白川岩屑流堆積物を形成し、約2,200年前には山頂部付近から溶岩が東方へ流下して白水滝溶岩を形成し、その末端付近に白水滝がある。最新の活動については事項解説『災害』の項目「白山火山1659年噴火」を参照されたい。
文献
  • 長岡正利・清水 智・山崎正男(1985)白山火山の地質と形成史.石川県白山自然保護センター研究報告,12号,9-24頁.
  • 写真 上野高原からみた白山火山
    (撮影:木澤慶和)
    写真 準備中
    岩屑なだれ
    水蒸気や空気などの気体と岩塊など固体破片の混合物が大規模に(体積で106m³以上 )高速で(速いもので150m/秒)斜面を流れ下る現象で、火山現象としてもみられるが、地震動で山体が崩壊して起こることもある。火砕流に似た現象であるが、火砕流はマグマ起源の物質を主体とする高温の流れであるのに対して、これは既存の物質からなる低温の流れである。気体が水に代わると泥流あるいは土石流となり、岩屑なだれが途中から河川の水を取り込んで泥流・土石流になることはよくある。
    白水滝
    白山火山の最新期の活動として約2200年前に流出した「白水滝溶岩」に架かる落差約72m、幅約8mの滝で、垂直に落下する水の色が乳白色に見えることからこの名が付けられたとされている。その雄大な姿からかつては日本三名瀑の一つに数えられることもあったが、1963(昭38)年に南隣の谷に大白川ダムが作られて滝の上流でダムへの取水が行われるようになり、滝に流れる水量が人為的に調節されてしまった。そのため自然状態の瀑布ではなくなったことで“日本の滝百選”には含まれていない。乗鞍火山の溶岩に架かる平湯大滝とほぼ類似の地質環境に形成された滝と理解してよい。
    白山火山1659年噴火
    白山火山において歴史時代になってからの確実な噴火記録は1554(天文23)年のもので、小規模な火砕流が翠ヶ池(みどりがいけ)火口から噴出し、それにともなわれる大小さまざまなパン皮状火山弾などがその周囲に散在している。1579(天正7)年、1640(寛永17)年にそれぞれ降下火砕物の噴出があったようであるが、詳細は不明である。最新の活動は1659(万冶2)年の噴火であり、“馬の毛”が降ったとの記録があり、これは現在のペレーの毛を指しているようだが、大きな被害をもたらしたものではなかった。
    大白川岩屑流堆積物
    白山火山のうち新白山火山の活動において山頂付近の東側が大規模に崩壊し、大量の崩落物が岩屑なだれとなって東へ向かって大白川を流下したもので、庄川にまで流れ込んだ。大白川の谷はそれにより約100mの厚さで埋めつくされたと考えられている。この崩壊によって山頂付近には大汝峰(おおなんじみね)(標高2684m)から剣ヶ峰(標高2677m)へ連なる峰に縁取られた東へ開いた馬蹄形の凹地が生まれた。この堆積物は、全体にわたって激しい硫化変質を受けており、ところどころに硫黄の結晶が見られたり、黄鉄鉱が点在していたりする。また、堆積物中には巨大な岩塊があまり見られず、円礫が含まれている。これらのことは、激しい硫化変質を受けやすい火口に近い山頂部付近から堆積物がかなり長距離にわたり移動できるような移動機構をもつ岩屑なだれで運ばれたことを示している。


    地質年代