火山名 深谷土石流堆積物【Fd】 ふかだにどせきりゅうたいせきぶつ
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代表地点 高山市奥飛騨温泉郷中尾の足洗谷支沢の深谷
形成時期 更新世後期~完新世(約2.3万年前~現在)
概要    奥飛騨温泉郷中尾地区の足洗谷支沢の深谷周辺やその南方において岩坪山(標高1,890m)から西方へ延びる尾根の標高1,400~1,500mに小分布がみられる。槍-穂高火山丹生川火砕流堆積物や所属不明の安山岩類の角礫~亜角礫(径1~5cm)を多量に含み、淘汰の悪い土石流堆積物からなる。下位層にあたる上宝火山上宝火砕流堆積物樅沢岳火山奥飛騨火砕流堆積物の礫は含まれておらず、形成時期や所属は不明である。
文献
  • 原山 智(1990)上高地地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所,175頁.
  • 写真 準備中
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    丹生川火砕流堆積物
    高原川流域から高山市の市街地周辺、御嶽山北西方へかけての広範囲に分布し、分布面積は500km²以上、噴出量は約100km³と推定されており、最大層厚は200m以上である。おもに斜長石と紫蘇輝石の結晶を多く含むデイサイト質の溶結凝灰岩からなり、堅硬な部分は石材としても利用されている。当初は分布状態などから乗鞍岳付近に噴出源があると考えられたが、槍-穂高連峰に分布する穂高安山岩類と同一のものであることが判明し、そこに形成されているコールドロンから噴出したことが明らかとなった。飛騨山脈地域の急激な隆起により削剥が進んでしまった槍-穂高火山の火山体から溢流した大規模な“アウトフロー火砕流堆積物”に相当する。
    上宝火砕流堆積物
    高原川・宮川流域の500km²にもおよぶ広範囲にわたり分布し、上宝火山の活動において、先行する福地凝灰角礫岩層の形成に引き続いて貝塩給源火道から40km³以上の噴出量でもたらされた流紋岩質の火砕流堆積物である。八本原などに典型的な火砕流台地を形成している。堆積物は1回の冷却単位で形成された溶結凝灰岩からなり、最大層厚が200m以上で、東部では最下部に約30mの厚さで非溶結部をともなう。
    奥飛騨火砕流堆積物
    飛騨山脈の樅沢(もみさわ)岳(標高2755m)周辺から南方へ蒲田(がまた)川流域や笠谷流域の山腹に分布し、水鉛谷給源火道から噴出して現在の地形に近い河谷に沿って流れた火砕流によりもたらされた堆積物である。推定分布面積70km²以上、推定総噴出量10km³以上、最大層厚約200mで、おもに流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、含まれる結晶片は斜長石・石英・黒雲母に富み、柱状の角閃石や輝石をともなう。
    槍-穂高火山
    槍-穂高連峰に分布する穂高安山岩類が、高山市地域に広く分布する丹生川火砕流堆積物の給源にあるコールドロンを埋積した堆積物であり、さらにその西側に分布する滝谷花崗閃緑岩に貫かれ、これらが第四紀前期の火山-深成複合岩体を形成していることで命名された火山である。この火山の活動では、巨大な噴煙にともなわれる降下火砕堆積物は形成されなかったようであるが、丹生川火砕流堆積物の流出に際して上空に噴き上げられた火山灰が「穂高-Kd39」と呼ばれる広域テフラとして房総半島地域にまで飛んでいる。
    上宝火山
    高山市奥飛騨温泉郷福地の南方にある貝塩(かいしお)谷北側山腹に分布する貝塩給源火道から流出した福地凝灰角礫岩層・上宝火砕流堆積物が形成したであろう火山体であり、「上宝・貝塩火山」と呼ぶこともある。現在は飛騨山脈の上昇隆起にともない火山体は削剥されてしまい残っていない。この火山から噴出した降下火砕堆積物は「貝塩上宝テフラ」と呼ばれる広域テフラを形成して中部・関東一円に分布する。
    樅沢岳火山
    飛騨山脈の西鎌(にしかま)尾根から樅沢岳(標高2,755m)周辺の山稜部に分布する奥飛騨火砕流堆積物がその南方で発見された水鉛谷給源火道から噴出したことが明らかにされ、この地域周辺に想定された火山体に対して命名されたものである。飛騨山脈が激しい隆起運動の場にあることで、火山体のほとんどは削剥されてしまっているが、その火道からは奥飛騨火砕流堆積物が噴出しただけではなく、広範囲に降下火砕堆積物を飛ばしており、岐阜県側では高山軽石層、長野県側では「大町テフラ(クリスタルアッシュ)」と呼ばれる。

    地質年代