手取層群
手取層群は、福井県東部から石川県南東部、岐阜県北部、富山県南部へかけての地域に分かれて分布し、中生代のジュラ紀前期から白亜紀前期にかけての時代に形成された海成~陸成の地層である。おもに砂岩・泥岩・礫岩などの砕屑岩類からなり、恐竜などの爬虫類化石を産出することで知られる。大きくみると浅海成層から陸成層へと移り変わっていることで、これまでは3つの亜層群(九頭竜・石徹白(いとしろ)・赤岩亜層群)に区分されていた。しかし、これら3亜層群の区分に関しては、形成時代の見直しが化石(特にアンモナイト化石)に基づいて進められてきたことで、堆積環境の変遷も含めていくつかの見解が示されており、それにともなっていくつかの層序区分の考えが示されてきた。ここではこれまでに一般的に用いられてきた3亜層群の名称をそのまま用い、形成時期に重点をおいた区分として、九頭竜・石徹白亜層群の境界をほぼ中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4,550万年前)、石徹白・赤岩亜層群の境界をほぼ白亜紀前期の約1億2,500万年前として表現する。ただし、分かれて分布する個々の地域すべてから時代決定に有効な化石が産出するわけではなく、年代測定の問題も含めて課題の残された地域もあるため、ここでは現段階での資料に基づいて区分し、時代不明の未区分層(Tu)として扱う地域もある。岐阜県地域において区分できる地域では、九頭竜亜層群は分布せず、石徹白・赤岩亜層群が分布し、それぞれ石徹白亜層群相当層、赤岩亜層群相当層として記述する。
捕獲岩
火成岩の中に含まれる別種の岩石片で、英語名をそのまま使いゼノリスという場合もある。その火成岩と同じ成因をもつ同源捕獲岩(オートリス)と成因的に無関係の外来捕獲岩に分けられる。
北俣谷閃緑岩
御母衣(みぼろ)湖西岸の北俣谷中流域およびその西方のアワラ谷下流域に分布し、石英モンゾ閃緑岩~ハンレイ岩からなる。ほぼ1億年前の形成年代を示し、先濃飛安山岩類を貫き、庄川火山-深成複合岩体の火山岩類に不整合に覆われる。アワラ谷中~上流域からその南方にかけて分布するアワラ谷花崗閃緑岩と異なる岩相を示すが、ほぼ同じ形成年代を示し、一続きの岩体と考えられている。
アワラ谷花崗閃緑岩
白川村南西部にあたる大白川支流のアワラ谷中~上流域からその南方の高山市荘川町西部にあたる尾神郷(おがみごう)川北岸地域へかけての広範囲に分布し、隣接して分布する北俣谷閃緑岩よりもいくらか珪長質で花崗閃緑岩質の岩相を示すことで区別されてきたが、それとほぼ同じ約1億年前の形成年代を示すことから、一続きの岩体と考えられている。手取層群を貫き、それに明確に熱変成作用を与えており、飛騨山脈の黒部五郎岳(標高2840m)周辺の山稜部に分布する黒部五郎岳閃緑岩・北ノ俣岳閃緑岩などとともに、“後手取・先濃飛”期の深成岩体である。
先濃飛期火成岩類
濃飛流紋岩の岩体北西部において手取層群を貫き、後濃飛期火成岩類の庄川火山-深成複合岩体を構成する火山岩類に覆われる火成岩類の存在が明らかになり、いずれもおおよそ1億年前前後の年代値を示すことで、通称「1億年岩石」として注目されるようになった。これらの岩石は、濃飛流紋岩の形成年代(約8,500万年以降)よりも明らかに古く、火山岩類としてはおもに安山岩質の、深成岩類としてはおもに閃緑岩質の組成をそれぞれもち、濃飛流紋岩の岩石学的な性質や化学的な性質においても明確に異なるマグマから形成されたものである。これらの岩石が莫大な量の珪長質マグマの活動でもたらされた濃飛期火成岩類の形成に先行していたことには重要な意味があると理解されているが、まだ充分に解明されているわけではない。
地質年代