地層名 庄川火山-深成複合岩体 しょうかわかざん-しんせいふくごうがんたい
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代表地点 -
形成時期 白亜紀後期~古第三紀(約6,700万~6,000万年前)
概要    岐阜県北西部の庄川上流域に約40km×25kmの規模で分布する火山岩類と花崗岩類は、濃飛流紋岩および関連する花崗岩類よりも新しい時期に形成されたものであることが明らかにされ、それらを庄川火山-深成複合岩体と命名して濃飛流紋岩と区別して扱うようになった。ただし、まだ全体にわたる詳細な調査・検討がなされていないため、とくに火山岩類についてはおもに分布域の南部において層序区分がなされているだけであり、それ以外の地域では「未区分火山岩類(S0)」としてある。区分された火山岩類は、下位から六厩川層大原谷溶結凝灰岩層シツ谷層金谷溶結凝灰岩層なお谷層宮谷溶結凝灰岩層に分けられており、前三者が「庄川コールドロン」と呼ばれるコールドロンの外側ユニット(コールドロン外ユニット)を、後三者がコールドロンの内側ユニット(コールドロン内ユニット)をそれぞれ構成している。貫入岩類は花崗岩ユニットとしてコールドロンの内部および縁辺部を貫いており、それらの産状や岩相上の特徴などから落部川文象斑岩白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)御母衣環状岩脈の3種類に分けられる。
文献
  • 棚瀬充史・亀井玄人・原山 智(2005)庄川火山-深成複合岩体.地団研専報,53号,143-157頁.
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    濃飛流紋岩
    濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
    大原谷溶結凝灰岩層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン外ユニットの下部層をなし、岩体南東部にあたる六厩川流域からその北方の森茂(もりも)川流域や栗ヶ岳(標高1728m)周辺地域、御母衣(みぼろ)湖周辺地域からその北方の大白川下流域へかけての地域に広く分布する。最大層厚約500mで、比較的細粒の斑晶と小型の本質岩片で特徴づけられる流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、薄い(20m以内)成層した凝灰岩層をしばしば挟む。非溶結部を介して六厩川層を覆う。
    シツ谷層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン外ユニットの上部層をなし、御母衣湖東岸地域からその北方の森茂(もりも)川流域や御前岳(標高1816m)周辺地域、御母衣湖西岸地域からその北方の大白川下流域へかけての地域に広く分布する。最大層厚が1,000m以上あり、下部は流紋岩質の火山礫凝灰岩や結晶凝灰岩などの火山砕屑岩層からなり、上部は火山礫凝灰岩を主体として、高マグネシウム安山岩の溶岩や砕屑岩類を挟み、下位層である大原谷溶結凝灰岩層の巨大ブロックを多量に含むとともに、石英斑岩や文象斑岩がシート状に貫いている。北俣谷閃緑岩、福島谷・秋町花崗岩、大原谷溶結凝灰岩層を覆い、白川花崗岩類(御母衣岩体)に貫かれる。
    金谷溶結凝灰岩層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン内ユニットの下部層をなし、白川村保木脇(ほぎわき)付近より南の庄川両岸に広く分布する。デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、白川花崗岩類(御母衣岩体・平瀬岩体)に貫かれて強い熱変成作用を受けている。コールドロン外ユニットのシツ谷層を覆っていると推定されている。
    コールドロン
    火山活動に関係して形成される凹地をカルデラというが、もともとは地形として認識できる場合に使われる用語であった。そのため、古い時代に形成された火山体で地形上の特徴が削剥されてわからなくなってしまった火山性陥没構造をコールドロンという。最近ではこれらの区別を厳密にしない傾向があり、すべて「カルデラ」と表現されている場合がしばしばみられる。
    落部川文象斑岩
    庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、コールドロン外ユニットの南側にあたる御母衣湖東岸の落部川流域に広く分布する。文象斑岩質あるいは石英斑岩質の岩相を示し、濃飛流紋岩のNOHI-3を構成する下呂火山灰流シートや庄川火山-深成複合岩体の大原谷溶結凝灰岩層を貫く。小規模な熱水鉱脈鉱床として金鉱床(六厩鉱山)をともなう。
    白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)
    庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、庄川沿いの低地に一連の岩体として分布する。おおよそ南半部に分布する平瀬岩体は約2×4kmの規模で、北半部に分布する鳩ヶ谷岩体は約4×10kmの規模でそれぞれ分布する。平瀬岩体全域と鳩ヶ谷岩体の中央部は中~細粒あるいは中~粗粒の黒雲母花崗岩からなり、鳩ヶ谷岩体の西部はこれに角閃石が含まれるようになり、同岩体の北部は角閃石黒雲母花崗閃緑岩~トーナル岩からなる。コールドロン内ユニットを貫いて強い熱変成作用を与え、その貫入接触面は一般にかなり低角度であり、浅所へ迸入した岩体の天井部分が露出している。
    御母衣環状岩脈
    庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、大白川下流域から庄川東岸域を経て、御前岳(標高1816m)周辺地域へかけて、庄川コールドロンを縁どるように南へ膨らんだ半円弧状をなして最大幅約1.5kmで断続的に分布し、さらにその北方延長上の猿ヶ野馬場山(さるがばんばやま)(標高1827m)から木滝谷へかけての地域や大白川下流域から北方へかけて庄川西岸域の山腹にも岩脈として分布する。岩体の中心部は完晶質の角閃石黒雲母花崗閃緑岩からなり、周縁部では斑岩状となる。周囲の火山岩類へは高角度で貫入しており、熱変成作用の及んでいる範囲は狭い。
    六厩川層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン外ユニットの最下部層をなし、同岩体の南東部にあたる六厩川流域からその北方へかけての地域に分布する。濃飛流紋岩のNOHI-3を構成する下呂火山灰流シートを覆い、約30~100mの層厚で、凝灰質砂岩・泥岩や細粒ガラス質凝灰岩などからなる連続性の良い砕屑岩層であり、すぐ上位に大原谷溶結凝灰岩層を密接にともなう。
    なお谷層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン内ユニットの中部層をなし、白川村保木脇(ほぎわき)東方のなお谷流域に弧状に分布する。流紋岩質の溶結凝灰岩や溶岩、凝灰質の砕屑岩層からなり、金谷溶結凝灰岩層を覆う。
    宮谷溶結凝灰岩層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン内ユニットの上部層をなし、白川村荻町周辺から帰雲山(かえりぐもやま)(標高1622m)周辺にかけて分布する。デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、なお谷層を覆い、白川花崗岩類(鳩ヶ谷岩体)に貫かれる。
    地質年代