地層名 穴毛谷層【K3】 あなげだにそう
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代表地点 高山市奥飛騨温泉郷 穴毛谷
形成時期 白亜紀最後期~古第三紀
概要    笠ヶ岳コールドロンを構成する火山岩類のうち第3期に形成されたもので、岩体の東部にあたる穴毛谷流域,笠ヶ岳(標高2,898m)・抜戸岳(ぬけどだけ;標高2813m)の山腹にかけて分布する。内側コールドロンを層厚約1,500mで厚く埋積し、おもに3~4枚の溶結凝灰岩層とそれらの間に挟在する溶岩・ハイアロクラスタイト層からなり,これらがほぼ水平に堆積して明瞭な縞模様を形成しており、それらが新穂高ロープウェイ終点の西穂高口駅付近から遠望観察できる。コールドロン底部をなす第2期の笠谷層を穴毛谷下流部で覆い、内側コールドロンの北縁部にあたる抜戸岳付近では陥没壁の崩壊を示す陥没角礫岩層が最上部に挟まっている。
文献
  • 棚瀬充史・笠原芳雄・原山 智・小井土由光(2005)濃飛流紋岩周辺地域の後期白亜紀~古第三紀火山岩類.地団研専報,53号,159-171頁.
  • 写真 蒲田川支流左俣谷小池新道入口における穴毛谷層の流紋岩質溶結凝灰岩(大型の本質岩片を含む)
    (提供:原山 智,撮影:棚瀬充史)
    写真 準備中
    笠ヶ岳コールドロン
    飛騨山脈の笠ヶ岳(標高2898m)周辺に分布し、これまで「笠ヶ岳流紋岩類」と呼ばれてきた火山岩類に対して、それらの形成過程を強調して与えられている名称である。もともとの岩体はほぼ完全な楕円形状をしていたらしく、引き続く深成活動や後からの火成活動により現在はその東半分が失われており、東西約12km×南北約11kmの規模で分布している。二重の環状断層で区切られた二重陥没構造をもつコールドロンからなり、隆起量の大きい地域に分布しているためにその内部がよく観察できる。おもに流紋岩質~流紋デイサイト質の溶岩・溶結凝灰岩からなり、成層した砕屑岩やごく少量の安山岩質火砕岩をともなう。下位から、中尾層、笠谷層、穴毛谷層、笠ヶ岳山頂溶結凝灰岩層に区分され、これらはほぼ水平な堆積構造を示し、積算層厚3,000m以上、総体積400km³以上の岩体を形成している。環状断層に沿って花崗斑岩の岩脈が貫入し、とりわけ外側コールドロンの縁の岩脈は連続性がきわめて良く、典型的な環状岩脈をなしている。岩体北東部で奥丸沢花崗岩に貫入され,熱変成作用を受けている。
    ハイアロクラスタイト
    おもに玄武岩質溶岩が水と接触して表面が急冷されて破砕され、多量に生じたガラス質の小片からなる。最近では玄武岩質岩石に限らず、いろいろな組成の水冷破砕された溶岩に使われるようになっている。
    笠谷層
    笠ヶ岳コールドロンを構成する火山岩類のうち第2期に形成されたもので、岩体の西部にあたる錫杖岳(標高2168m),大木場の辻(おおきばのつじ)(標高2232m)から笠谷流域へかけての地域に分布する。外側コールドロンを層厚約1,600mで厚く埋積し、おもに斑晶の乏しい流紋岩溶岩からなり、凝灰質の破砕屑岩層や溶結凝灰岩層をともない、ほぼ水平な構造を示す。分布域の西部ではコールドロンの床をなす飛騨帯構成岩類の飛騨花崗岩類を不整合に覆う。
    コールドロン
    火山活動に関係して形成される凹地をカルデラというが、もともとは地形として認識できる場合に使われる用語であった。そのため、古い時代に形成された火山体で地形上の特徴が削剥されてわからなくなってしまった火山性陥没構造をコールドロンという。最近ではこれらの区別を厳密にしない傾向があり、すべて「カルデラ」と表現されている場合がしばしばみられる。
    溶結凝灰岩
    火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。

    地質年代