地層名 吉田川安山岩類【A】 よしだがわあんざんがんるい
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代表地点 郡上市明宝町水沢上(みぞれ) 松谷林道
形成時期 白亜紀前期(約1億年前(?))
概要    長良川支流の吉田川上流部から馬瀬川支流の松谷上流域にかけての地域に南北約6kmの範囲に層厚約200mで分布する。安山岩質の溶岩および火砕岩からなり、一部に砕屑岩層をともなう。飛騨外縁帯構成岩類美濃帯堆積岩類不整合に覆い、すぐ南側に分布する水沢上花崗岩に貫かれて熱変成作用を受けている。形成時期を特定するような資料は得られていないが、御母衣(みぼろ)湖西岸地域に分布する先濃飛安山岩類と類似した岩質をもつことなどから、“後手取・先濃飛”期の火山岩類と考えられている。
文献
  • 河田清雄・礒見 博・杉山雄一(1988)萩原地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,62頁+付録40頁.
  • 写真 郡上市明宝の水沢上(みぞれ)林道における吉田川安山岩類の安山岩質火砕岩
    (撮影:小井土由光)
    写真 郡上市明宝の水沢上(みぞれ)林道における吉田川安山岩類の安山岩質溶岩
    (撮影:小井土由光)
    飛騨外縁帯構成岩類
    飛騨外縁帯は、飛騨帯の南側を取りまくように幅数~30kmほどで細長く分布する地質帯である。岐阜県地域では飛騨山脈の槍ヶ岳(標高3180m)付近から高山市の奥飛騨温泉郷、丹生川町北部~国府町地域、清見町楢谷(ならだに)、郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)などに断片的に配列して露出している。そこを構成している岩石はかなり変化に富み、古生代に形成された非変成の砕屑岩類や火山岩類、結晶片岩などからなる変成岩類、超苦鉄質岩(U)から変化した蛇紋岩と呼ばれる岩石などである。これらの岩石は、飛騨帯構成岩類を一部に含めた当時の大陸(中朝地塊と呼ばれる)の東縁で形成された陸棚や浅海性の堆積物および火山砕屑物が中生代ジュラ紀中ごろまでに大規模な横ずれ運動をともなって飛騨帯構成岩類と接するようになり、その過程でもたらされた変成岩類や超苦鉄質岩を断片的にともなって形成されたと考えられている。ただし、飛騨外縁帯と飛騨帯との間には、富山県地域や新潟県地域などにおいて宇奈月帯あるいは蓮華帯と呼ばれる変成岩類で構成された地帯が分布しており、岐阜県地域においてもそれらとよく似た性質の岩石が断片的に分布するが、よくわかっていない点もあるため、ここではすべて飛騨外縁帯の構成岩類として扱う。
    美濃帯堆積岩類
    飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。
    不整合
    重なった地層の間において著しい堆積間隙のある状態で堆積している場合をいい、実際にはその間に隆起・削剥や深成岩類の貫入、構造運動などの事象が起こっていることに着目して用いられることが多い。整合の対語である。
    水沢上花崗岩
    郡上と飛騨を結ぶせせらぎ街道の郡上市・高山市境界にある坂本トンネル付近に分布し、東西約1.5km×南北約2.5kmの小さな岩体である。中~粗粒の黒雲母花崗岩からなり、一部に花崗斑岩をともなう。含まれる鉱物などの特徴が庄川火山-深成複合岩体の白川花崗岩類に類似しており、形成年代もそれに近いことから、直接的な関係はわからないが、それと同類の花崗岩類と考えられている。
    熱変成作用
    既存の岩石が熱いマグマと接触して岩石組織や組成を変えられてしまう現象で、接触変成作用ともいう。この作用で形成された岩石を熱変成岩あるいは接触変成岩といい、これを「ホルンフェルス」と呼ぶこともある。これはドイツ語で、ホルン=角のように固くなったフェルス=様子を意味しており、もともとは泥岩を源岩とする熱変成岩に用いられた用語であるが、すべての熱変成岩に用いられることが多い。熱をもたらすマグマは接触した岩石に熱を奪われて冷却していくから、熱変成作用は花崗岩体を形成するような大きな容量をもつマグマの周辺で起こりやすい。
    先濃飛安山岩類
    白川村の御母衣湖西岸にある北俣谷上流域に分布し、斑晶の乏しい安山岩質の溶岩および同質の火砕岩からなる。北俣谷閃緑岩に貫かれ、熱変成作用を受けており、庄川火山-深成複合岩体の火山岩類に不整合に覆われる。この地域の南西方にあたる福井県の九頭竜川上流域に分布し、約1億年前に形成された林谷安山岩と呼ばれる火山岩類とほぼ似た性質の岩石からなり、富山・新潟県境の親不知付近でも類似の岩石が発見されており、この時期に類似の火山活動が起こったことを示している。
    地質年代