地層名 チャート石灰岩互層【Mcl】 ちゃーとせっかいがんごそう
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代表地点 美濃市立花横持(たちばなよこもち)
形成時期 三畳紀後期
概要    中生代三畳紀後期のチャート層中に石灰岩層がはさまれるように互層をなす岩石である。チャートは放散虫などの微小化石が深海底に堆積することでできる岩石であるのに対して、石灰岩の主成分である炭酸カルシウムは炭酸塩補償深度(CCD)という水深を超えてしまうと海水に溶けてしまい堆積物を作らないことから、石灰岩が浅海でしか形成されないとされ、これらが見かけ上は共存していることになる。そのため、両者が共存するような特異な環境変化があったと考えられたり、珪酸(SiO₂:チャート成分)と炭酸カルシウム(CaCO₃:石灰岩成分)の交代作用などで説明されてきているが、実際の産状からみると構造運動時に流動変形しやすい石灰岩がチャート層の層間や褶曲構造に後から注入あるいは充填することで互層状に見えるのかもしれない。
文献
  • 佐野弘好・桑原希世子・八尾 昭・尾上哲治(2010)美濃帯西部,舟伏山地域の上部三畳系珪質ミクライト.地質学雑誌,116巻,321-340頁.
  • 写真 美濃市横持の長良川左岸に露出するチャート石灰岩互層
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 美濃市横持の長良川河床に露出するチャート石灰岩互層
    (撮影:小井土由光)
    美濃帯堆積岩類
    美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
    チャート
    一般には硬く緻密な微粒珪質堆積岩の総称であり、美濃帯堆積岩類を構成する主要な岩石の一つとして特徴的に産する。厚く層状に分布することが多く、これを層状チャートと呼ぶ。一部に古生代ペルム紀のものも含まれるが、ほとんどは中生代三畳紀~ジュラ紀前期に海底に堆積した放散虫などのプランクトンからなる遠洋性の堆積物で、陸源砕屑物をまったく含まない。
    石灰岩
    美濃帯堆積岩類の中には、金生山の赤坂石灰岩、舟伏山地域の舟伏山石灰岩、石山地域の石山石灰岩などと呼ばれる比較的大きな石灰岩の岩体が分布しており、石灰石資源として採掘されていたり、場所によっては鍾乳洞地帯を形成している。古生代のペルム紀に形成された緑色岩(玄武岩質火山岩類)からなる海山を覆うサンゴ礁を構成していた石灰質生物の遺骸が集積して形成されたものであり、一般に緑色岩と密接にともなって美濃帯堆積岩類の中では最も古い時期に形成された岩石である。
    放散虫
    海生の動物プランクトンとして先カンブリア時代から現在に至るまで生息している単細胞生物で、珪酸成分からなる0.1~0.2mmほどの大きさの骨格を持ち、そのため微化石として残されていることが多い。生息した時代により骨格の形態が異なり、その変化が速いために重要な示準化石となる。多くのチャートは放散虫骨格の堆積によって形成されており、それをフッ酸(HF)で腐蝕させた不溶残渣から実体顕微鏡下で放散虫を取り出し、走査型電子顕微鏡を用いて骨格の形態や微細な構造を観察する技術が1980年代になってから確立し、それにより美濃帯堆積岩類では薄いチャート層の単位で形成時代がなされ、それまでおもにフズリナ化石などで決められていた時代とは比べものにならない精度で時代決定がなされるようになった。こうした状況を「放散虫革命」という。

    地質年代