火山名 焼岳火山・中尾火砕流堆積物【VY5】 やけだけかざん・なかおかさいりゅうたいせきぶつ
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代表地点 高山市奥飛騨温泉郷 焼岳/中尾
形成時期 更新世後期~完新世(約2.3万~現在)
概要    焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、その中で最も新しく、現在も活動中の火山である。焼岳(標高2,455m)を中心として、いくつかの溶岩、溶岩ドームとそれらにともなわれる火砕岩類からなる。現在の山頂部を作る溶岩ドームは約2,300年前に形成されたものであり、その形成にともなって流出した中尾火砕流堆積物が山体の東~北斜面から北側山麓の足洗谷に沿って蒲田川流域まで流下して新穂高温泉の中尾地区がある中尾平を形成しており、最大径5mにもおよぶ発泡の悪い安山岩~デイサイト質の角~亜角礫と同質の基質からなるblock and ash flow堆積物である。歴史時代に入ってからの活動としては、1907(明40)年から1939(昭14)年まで水蒸気爆発が活発に繰り返され、特に1915(大4)年に水蒸気爆発にともない発生した泥流が梓川をせき止めて大正池を作ったことは有名である。最新の活動については事項解説『災害』の項目「焼岳火山1962年噴火」を参照されたい。
文献
  • 及川輝樹(2002)焼岳火山群の地質-火山発達史と噴火様式の特徴.地質学雑誌,108巻,615-632頁.
  • 写真 中尾温泉から眺めた焼岳山頂部
    (撮影:小井土由光)
    写真 焼岳山頂からみた火口湖「正賀池」(1907-11年活動)
    (撮影:中田裕一)
    焼岳火山群
    飛騨山脈の南部にあって、焼岳火山を主峰とする複数の火山体の集まりであり、乗鞍火山帯の中で最近1万年間では最も活発な活動を続けている。形成時期により約12万~7万年前の旧期焼岳火山群と約3万年前以降の新期焼岳火山群に大別され、前者には岩坪山・大棚火山、割谷山火山が、後者には白谷山火山、アカンダナ火山、焼岳火山がそれぞれ該当する。全体に斜長石と角閃石の斑晶が目立つ安山岩質~デイサイト質の溶岩ドーム、厚い溶岩流、泥流堆積物、火砕流堆積物からなり、火砕流堆積物はすべて溶岩ドームの破壊によってできたblock and ash flow堆積物であり、激しい爆発的な噴火活動をほとんど行なっていない。
    新穂高温泉
    高原川支流の蒲田(がまた)川沿いの広範囲に広がる温泉群の総称で、最奥部の「新穂高」、下流側の「蒲田」、南東岸の高台にある「中尾」の3地区に分かれ、それぞれ源泉が異なる。ほとんどが笠ヶ岳コールドロンを構成する火山岩類や花崗岩類の分布域にあるが、いずれも高温の豊富な湯量が得られることから、焼岳火山群としては最新の焼岳火山を熱源としていると考えられる。これらのうち中尾地区は昭和に入ってから源泉が発見された比較的新しい温泉であり、とりわけ高温の温泉や蒸気が豊富に出ることで、地熱発電等の開発が進められようとしている。
    block and ash flow堆積物
    高温の溶岩ドームや溶岩流の一部が崩落することで起こる小型の火砕流により形成される堆積物で、いろいろな大きさの溶岩の岩塊、角礫、岩片などからなる。火山体の斜面上にあって、溶岩自体の爆発や重力などにより崩落を起こすことで発生する。1991(平3)年に雲仙普賢岳で発生した火砕流はこのタイプであり、火砕流の噴火タイプとしてはメラピ型火砕流と呼ばれることもある。
    焼岳火山1962年噴火
    焼岳火山において歴史時代になってからの噴火記録は1907(明40)年以降の活動について詳細に残されており、1935(昭10)年までは毎年のように水蒸気噴火を中心とした噴火活動が繰り返されている。それらの中で1915(大4)年6月6日の大爆発で泥流が梓川を堰きとめて大正池を形成したことはよく知られている。最新の活動は1962(昭37)年6月17日の水蒸気爆発で始まるもので、山頂北側の長さ500mほどの割れ目噴火口から起こった。松本市で降灰し、旧焼岳小屋を火山灰が押しつぶし4名の負傷者が出ている。なお、焼岳火山の山頂から南東方へ約3kmにあたる中部縦貫自動車道の安房トンネルの取付け道路工事現場において、1995(平7)年2月11日14時25分に火山性ガスによる水蒸気爆発が起こり、工事関係者4名が死亡した。



    地質年代