地層名 白鳥流紋岩【SR】 しろとりりゅうもんがん
地図 代表的地点を見る
代表地点 郡上市白鳥町 向山
形成時期 白亜紀最末期
概要    郡上市大和町の白尾山(標高1,613m)南西麓から同市白鳥町、高鷲(たかす)町を経て、福井県大野市へかけての地域に、烏帽子・鷲ヶ岳火山大日ヶ岳火山願教寺山・三ノ峰火山などの第四紀火山の基盤として散在的に分布する。濃飛流紋岩奥美濃酸性岩類に挟まれた地域にあり、流紋岩質の溶結凝灰岩や非溶結の凝灰岩類,泥岩層や石炭層などの砕屑岩層などからなるが、火山層序が明らかにされているのは岩体東部の限られた地域だけであり、周辺岩体との対比などもまったくわかっていない。
文献
  • 棚瀬充史・笠原芳雄・原山 智・小井土由光(2005)濃飛流紋岩周辺地域の後期白亜紀~古第三紀火山岩類.地団研専報,53号,159-171頁.
  • 写真 郡上市高鷲町八百僧(はっぴゃくそう)谷に露出する白鳥流紋岩の流紋岩溶岩
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 高鷲町八百僧谷において白鳥流紋岩の球顆流紋岩溶岩が風化して礫状になった“ソロバン玉石”
    (撮影:鹿野勘次)
    烏帽子・鷲ヶ岳火山
    郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km³とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。
    大日ヶ岳火山
    長良川の最上流部域にあって、大日ヶ岳(標高1709m)を中心に南北約8km、東西約10kmに広がる火山体であり、復元総体積は約16km³とされている。おもに比較的小規模な安山岩質の溶岩層からなることを特徴としている。山頂部付近の2ヶ所に火口跡と推定されている凹地があり、すべてそれらから噴出したと考えられている。火砕流堆積物や火山角礫岩などの火砕岩は少ない。九頭竜火山列の火山体の中では比較的若い時期に活動した火山である。
    願教寺山・三ノ峰火山
    両白山地北部の県境尾根に沿って、北から、三ノ峰(標高2128m)、銚子ヶ峰(標高1810m)、願教寺山(標高1691m)、薙刀山(なぎなたやま)(標高1647m)、野伏ヶ岳(のぶせがたけ)(標高1674m)、杉山(標高1181m)と続く山稜に分布する火山である。全体にかなり浸食され、とりわけ願教寺山北西斜面や野伏ヶ岳東方斜面などで大規模な崩壊地形がみられ、火山地形はほとんど残されていない。火山体の復元体積は約20km³と推定されている。大きく願教寺山以南地域と三ノ峰周辺地域で火山岩類の構成が異なる。前者では8枚、後者では3枚の安山岩質溶岩層にそれぞれ分けられている。
    第四紀火山
    火山活動は地球の創生以来、延々と続いているが、「火山」という用語は地形を表わす用語であり、古い時代の火山活動で形成された地質体には火山体に相当するものが残っていないために使えない。一般には、第四紀の火山活動で形成されたものであれば火山体がほぼ残されていることから火山として扱っており、日本火山学会では削剥されてしまっていてもおおよそ260万年前までに形成されたものであれば「第四紀火山」としてそれらに名称をつけている。岐阜県内にも多くの第四紀火山が分布しているが、それらの形成時期や活動期間にはかなりの差異があり、火山体ごとに研究の経緯や精度に差異もあるため、それらをすべてを統一した基準で括ることはできない。多くは複数の火山体をまとめた火山列・火山群あるいはそれに相当する単位で整理されるが、関係する噴出物や貫入岩類を一連の火成活動の産物として扱える火山や噴出物とその給源火道構成物だけが残されている火山もある。
    濃飛流紋岩
    濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
    奥美濃酸性岩類
    奥美濃酸性岩類は,岐阜県北西部の奥美濃地方から福井県東部の奥越地方にかけて分布する火山岩類およびそれに密接に付随する貫入岩類の総称である。火山岩類は、おもに流紋岩~流紋デイサイト質の溶結~非溶結凝灰岩からなり、流紋岩質の溶岩や凝灰角礫岩、デイサイト~安山岩質の溶岩や火砕岩のほか、一部で玄武岩質安山岩の溶岩や湖成堆積物をともなう。貫入岩類は、火山岩類と複合岩体を形成して個々の岩体の給源域を埋めるように、あるいはコールドロンの縁に沿って分布し、花崗岩、トーナル岩、花崗閃緑斑岩、石英斑岩などからなる。見かけ上、7つの岩体(洞戸(ほらど)・板取(いたどり)・明石谷(あけしだに)・面谷(おもだに)・入谷(にゅうだに)・八幡(はちまん)・柳島山(やなぎしまやま)岩体)に分かれて分布し、それぞれ独立した活動史をもつように見えるが、全体に火山体の深部が露出しており、洞戸・柳島山岩体は「洞戸コールドロン」と呼ばれる陥没体内に埋積した火山岩であり、板取岩体はコールドロンの外に溢流した火山岩であると考えられている。八幡岩体を構成する火山岩類は、東隣に分布する濃飛流紋岩のNOHI-3あるいはNOHI-4に相当していると考えられているため、『濃飛期火成岩類』の項目で扱う。
    溶結凝灰岩
    火砕流によりもたらされた堆積物が溶結作用を受けると、その程度により強溶結、弱溶結、非溶結凝灰岩となり、一般には強溶結凝灰岩をさしていう。おもに火山灰が集まって形成された岩石ではあるが、強く圧密化した岩石となり、きわめて堅硬な岩石となる。
    地質年代