地層名 落部川文象斑岩【Sg1】 おちべがわもんしょうはんがん
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代表地点 御母衣(みぼろ)湖東岸の落部川流域
形成時期 古第三紀
概要    庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、コールドロン外ユニットの南側にあたる御母衣(みぼろ)湖東岸の落部川流域に広く分布する。文象斑岩質あるいは石英斑岩質の岩相を示し、濃飛流紋岩のNOHI-3を構成する下呂火山灰流シート庄川火山-深成複合岩体大原谷溶結凝灰岩層を貫く。小規模な熱水鉱脈鉱床として金鉱床(六厩鉱山)をともなう。
文献
  • 棚瀬充史・亀井玄人・原山 智(2005)庄川火山-深成複合岩体.地団研専報,53号,143-157頁.
  • 写真 荘川町岩瀬の落部川林道沿いにおける落部川文象斑岩
    (撮影:小井土由光)
    写真 準備中
    庄川火山-深成複合岩体
    岐阜県北西部の庄川上流域に約40km×25kmの規模で分布する火山岩類と花崗岩類は、濃飛流紋岩および関連する花崗岩類よりも新しい時期に形成されたものであることが明らかにされ、それらを庄川火山-深成複合岩体と命名して濃飛流紋岩と区別して扱うようになった。ただし、まだ全体にわたる詳細な調査・検討がなされていないため、とくに火山岩類についてはおもに分布域の南部において層序区分がなされているだけであり、それ以外の地域では「未区分火山岩類(S0)」としてある。区分された火山岩類は、下位から、六厩川層、大原谷溶結凝灰岩層、シツ谷層、金谷溶結凝灰岩層、なお谷層、宮谷溶結凝灰岩層に分けられており、前三者が「庄川コールドロン」と呼ばれるコールドロンの外側ユニット(コールドロン外ユニット)を、後三者がコールドロンの内側ユニット(コールドロン内ユニット)をそれぞれ構成している。貫入岩類は、花崗岩ユニットとしてコールドロンの内部および縁辺部を貫いており、それらの産状や岩相上の特徴などから、落部川文象斑岩、白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)、御母衣環状岩脈の3種類に分けられる。
    濃飛流紋岩
    濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
    下呂火山灰流シート
    濃飛流紋岩の岩体南縁部を除くほぼ全域にわたり分布し、NOHI-3の主体をなすとともに濃飛流紋岩の中で最大規模の火山灰流シートであり、最大層厚は1,000m以上もある。下部で流紋岩質の、上部で流紋デイサイト質の溶結凝灰岩からなり、岩体北部ではそのさらに上部に流紋岩質の溶結凝灰岩をともなう。これらの岩相間の関係は漸移的であり、場所によっては繰り返して出現することもある。流紋岩質の溶結凝灰岩は、径4~6mmの粗粒の斜長石・石英・カリ長石を多量に含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・不透明鉱物をを含む。長径数~十数cmの大型の本質岩片を多量に含む。流紋デイサイト質の溶結凝灰岩は、径3~5mmの粗粒の斜長石・石英を多く含み、苦鉄質鉱物として黒雲母・角閃石・輝石・不透明鉱物を比較的多く含む。いずれの溶結凝灰岩も長径10cmを超える大型の本質岩片を多量に含み、その中に径1cmを超える粗粒斜長石斑晶を多量に含むことを特徴とする。上部の流紋岩質溶結凝灰岩は下部のものに比べて本質岩片が径1cmほどと小型になる。
    六厩川層・大原谷溶結凝灰岩層
    庄川火山-深成複合岩体のコールドロン外ユニットのうち最下部層および下部層をなす。六厩川層は、約30~100mの層厚で、同岩体の南東部にあたる六厩川流域からその北方へかけての地域に分布し、濃飛流紋岩のNOHI-3を構成する下呂火山灰流シートを覆い、凝灰質砂岩・泥岩や細粒ガラス質凝灰岩などからなる連続性の良い砕屑岩層からなる。大原谷溶結凝灰岩層は最大層厚約500mで、六厩川流域からその北方の森茂(もりも)川流域や栗ヶ岳(標高1728m)周辺地域、御母衣(みぼろ)湖周辺地域からその北方の大白川下流域へかけての地域に広く分布し、比較的細粒の斑晶と小型の本質岩片で特徴づけられる流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、薄い(20m以内)成層した凝灰岩層をしばしば挟む。非溶結部を介して六厩川層を覆う。
    熱水鉱脈鉱床
    地殻内に存在する高温水溶液(熱水)から沈殿生成した鉱床で、熱水はおもにマグマ活動に由来しており、既存の岩石と反応することで変質作用を与えたり(熱水変質作用)、岩石を溶解して交代作用を起こしたり、溶解している金属種を沈殿させることで形成される。大きく、スカルン鉱床、鉱脈型鉱床、黒鉱鉱床に分けられる。
    六厩鉱山
    庄川火山-深成複合岩体を構成する落部川文象斑岩にともなわれる小規模な熱水鉱脈鉱床を稼行対象とした鉱山で、六厩川沿いおよび支谷沿いにいくつかの坑口があった。金山としてはおもに江戸時代初期に稼行し、中期以降は休止していたようである。現在も旧坑口付近の谷沿いで砂金として採取できる。
    コールドロン
    火山活動に関係して形成される凹地をカルデラというが、もともとは地形として認識できる場合に使われる用語であった。そのため、古い時代に形成された火山体で地形上の特徴が削剥されてわからなくなってしまった火山性陥没構造をコールドロンという。最近ではこれらの区別を厳密にしない傾向があり、すべて「カルデラ」と表現されている場合がしばしばみられる。
    地質年代