地層名 領家変成岩類【R】 りょうけへんせいがんるい
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代表地点 恵那市上矢作町 達原(たつばら)渓谷
形成時期 白亜紀前期(約1億年前)
概要    領家帯構成岩類の一つとして典型的な低圧・高温型変成作用で形成された変成岩類からなる。美濃帯堆積岩類の分布域へ向かって変成度が低下していき、やがて非変成岩に漸移していく。岐阜県地域においては、この変成岩類の形成にかかわる領家帯構成岩類を代表する花崗岩である天竜峡花崗岩、あるいはそれよりも後に濃飛期火成岩類として大規模に形成された伊奈川花崗岩に広域にわたり貫かれ、小規模に分布しているだけである。いずれも砂岩や泥岩を原岩とする雲母片岩からなり、片理(片状構造)が明瞭な岩石である。
文献
  • 写真 恵那市上矢作町の達原渓谷に露出する領家変成岩類①
    (撮影:小井土由光)
    写真 恵那市上矢作町の達原渓谷に露出する領家変成岩類②
    (撮影:小井土由光)
    美濃帯堆積岩類
    飛騨帯は、岐阜県の北部から北陸地方へかけての地域に広がる変成岩類と花崗岩類からなる地質帯である。ただし、これらの構成岩類がこの地域のどこにでも分布しているわけではなく、それ以降に形成された岩石類に覆われたり貫かれているために、実際にはかなり限られた地域にだけ分布する。変成岩類は総称して「飛騨片麻岩類」と呼ばれ、それらを形成した広域変成作用の時期についてはいくつかの見解があるが、おおよそ3億年~4億5000万年前(古生代石炭紀・シルル紀・デボン紀)と2億4000万年前ごろの少なくとも2回にわたり重複した変成作用で形成されたとされている。花崗岩類はこれまで「船津花崗岩類」と呼ばれ、1億8000万年前(中生代ジュラ紀)に飛騨外縁帯構成岩類の分布域にまで及ぶ範囲に一斉に貫入したことで飛騨片麻岩類に熱変成作用をもたらしたと考えられてきた。しかし、それらの中には古い年代を示す岩体もあり、一律に扱うことができないことがわかってきたため、それらの形成時期を少なくとも2期に分けて区別するようになった。変成岩類も花崗岩類も複数回におよぶ複雑な過程を経て形成されているために、すべての飛騨帯構成岩類を全域にわたって一定の基準で表現することはかなりむずかしいことから、ここではそれらを「飛騨変成岩類」、「飛騨花崗岩類」と呼び、それぞれを6種類と10種類の岩相に区分することで表現する。そのため1つの岩相で示される岩石の中にも別の変成・深成作用で形成された岩石が含まれている場合もある。
    天竜峡花崗岩
    長野県南部の天竜峡付近に模式的に分布し、領家帯構成岩類としてもともとは領家帯に広く分布していたと考えられるが、後から濃飛期火成岩類の花崗岩類に広く貫かれてしまっているために分布は断片的になっている。岐阜県地域においてはその南東端部のかなり限られた範囲にだけ分布する。おもに粗粒・斑状の黒雲母花崗岩からなり、領家変成岩類の構造とほぼ平行に、石英・長石の多い白色の部分と黒雲母の多い黒色の部分が片麻状構造をつくる。
    濃飛期火成岩類
    濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
    伊奈川花崗岩
    中部地方の領家帯を中心に美濃帯南部も含めてきわめて広い範囲に分布する巨大な花崗岩体であり、そのうち岐阜県内には濃飛流紋岩の南縁部においてそれとの接触部にあたる浅部相が広く分布し、多くの地域でNOHI-1およびNOHI-2を貫いており、それらと火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。ただし、県南東縁の上村(かみむら)川流域では領家帯構成岩類の天竜峡花崗岩の周辺において三都橋花崗岩と呼ばれている深部相が分布するが、ここでは区別せずに扱っている。斑状あるいは塊状の粗粒角閃石黒雲母トーナル岩~花崗岩からなる。この花崗岩は、古典的な「地向斜-造山運動」論において造山帯中核部の地下深部で形成された花崗岩体の典型例と考えられていたが、1960年代に地表に噴出・堆積した濃飛流紋岩を貫いていることが発見され、地表近くのきわめて浅所までマグマとして上昇してきたことになり、それまでの火成活動史の考えを根底から覆えし、塗り替えることとなった。
    片理(片状構造)
    結晶片岩に特徴的に表れ、柱状、板状、鱗片状などの結晶が一定方向に並ぶことで生じる縞状(線状片理)あるいは面状(面状片理)に表れる構造。
    達原渓谷
    岐阜県の最南東端部では矢作川水系の上村(かみむら)川上流部の川筋が長野県との県境となっている。山間部におけるほとんどの県境が尾根筋にある岐阜県においては珍しい場所となっており、そこにある渓谷である。ここは紅葉の名所として知られ、おもに領家帯構成岩類の天竜峡花崗岩の中を流れ、少し上流にあたる櫃ヶ沢(ひつがさわ)地区には均質な花崗岩を急流がえぐって甌穴(ポットホール)が作られており、恵那市指定の天然記念物(1975(昭50)年6月2日指定)になっている。そのさらに上流には天正地震にまつわる「“海”の謎」として知られる“海”と呼ばれる地域がある。
    領家帯構成岩類
    領家帯は美濃帯の南側に帯状に分布し、領家変成帯とも呼ばれる。美濃帯堆積岩類を形成した中生代ジュラ紀の付加体が白亜紀中頃(おおよそ1億年前ごろ)に花崗岩質マグマの大規模な上昇により地下深部の高温条件下で変成作用を受けて形成された変成岩類とそれをもたらした花崗岩類で構成される地質帯である。実際には、後続する濃飛期火成岩類の花崗岩類に広範囲にわたり貫かれているために、これらの構成岩類の分布は限られており、岐阜県地域においても南縁部の限られた地域にわずかに分布する。なお、「領家」という名称は天竜川支流の水窪(みさくぼ)川沿いにある地名「奥領家」(浜松市天竜区水窪町奥領家)に由来する。
    地質年代