項目 トーナル岩質片麻岩 とーなるがんしつへんまがん
関連項目 凡例解説>飛騨帯構成岩類>飛騨変成岩類>閃緑岩質~トーナル岩質片麻岩
地点 飛騨市神岡町二ツ屋 高原川河床
見学地点の位置・概要    神岡町中心部から北上する国道41号は割石温泉口を過ぎるとすぐに二ツ屋橋を渡る。渡るとすぐに大堀平(おおほりだいら)洞門に入るが、その直前の左手に工事用の大きな広場がある。広場の上を通る高圧線直下にあたる位置から高原川の河床へ下りる道があり、河床へ下りると右手(下流側)にトーナル岩質片麻岩が露出している。
見学地点の解説    ここでは片麻状構造がほとんど見られず、長柱状の角閃石を含む等粒状優白質の深成岩という印象をもつ岩石が見られる。石英がほとんど確認できないトーナル岩と思われる岩石が主体をなして露出しているが、全体にかなり不均質であり、含まれる鉱物に粗粒部も細粒部もみられ、伊西ミグマタイトのような岩相を示す部分に移化するようにも見える。ただし、それらの関係はよくわからない。角閃岩、角閃石片麻岩、はんれい岩、晶質石灰岩などの岩塊が捕獲岩のように大量に含まれ、それらに引き伸ばされているようなものはなく、大きさは最大で1mを超え、20~30cmのものが多い。
ジオの視点    トーナル岩質片麻岩は、閃緑岩質片麻岩とともに岐阜県内では神岡町市街地より下流の高原川流域をはじめとしてかなり広い地域に分布する。実際には粗粒~中粒の角閃石片麻岩や角閃岩などに変化していることが多いが、それらの中に長柱状自形の巨晶組織(角閃石)や自形の斑状組織(斜長石)などの火成組織が残されていることから、おもに閃緑岩質~トーナル岩質、部分的には角閃石斑れい岩質の深成岩を源岩とする片麻岩と考えられている岩石である。石灰岩や石灰珪質片麻岩などの堆積岩起原の変成岩を岩片状~層状の捕獲岩として含み、角礫状~不規則なブロックとして伊西ミグマタイト中に包有される。
写真 大量の岩塊(おもに角閃石片麻岩)を含むトーナル岩質片麻岩
(撮影:小井土由光)
写真 トーナル岩質片麻岩中に捕獲岩状に含まれるはんれい岩の岩塊
(撮影:小井土由光)
片麻状構造
等粒状完晶質の岩石において、片理をもつ有色鉱物に富む優黒質部と粗粒の無色鉱物に富む優白質部の互層からなる縞状構造が顕著になったもの。必ずしも片麻岩に使う用語ではなく、花崗岩の組織を表現する場合にしばしば用いられる。
トーナル岩
広い意味の花崗岩質の岩石を区分する場合、カリ長石が斜長石より多い岩石を狭義の花崗岩、カリ長石と斜長石がほぼ等量の岩石をアダメロ岩、カリ長石が斜長石より少ない岩石を花崗閃緑岩といい、花崗閃緑岩よりさらにカリ長石に乏しい岩石をトーナル岩と呼ぶ。いっしょに含まれる有色鉱物は一般に角閃石か黒雲母で、化学組成としてNa2Oに富み、K2Oに乏しい特徴がある。
伊西ミグマタイト
神岡町伊西地域から神岡鉱山周辺、神岡町西部の流葉山(ながれはやま)(標高1423m)周辺などにややまとまって分布するが、一般には石灰岩~石灰珪質片麻岩にともなって幅数cm~数mの脈状ないし不規則なプール状に小規模な岩体として分布する。角閃岩や角閃石片麻岩の岩片を包有し、ミグマタイト構造を作り、緑色短柱状の透輝石(~サーラ輝石)を含む粗粒~細粒、塊状~片麻状組織の珪長質岩で、神岡付近ではカリ長石に富み、当初「伊西閃長岩」と呼ばれたが、岩相変化が大きく、神岡鉱山の技術者により産状に基いて伊西ミグマタイト(または伊西岩)と呼ばれるようになった。


地質年代