鉱山名 東濃鉱山 とうのうこうざん
所在地 土岐市泉町河合1221
 対象資源 ウラン (廃鉱)
概 要
   日本におけるウラン鉱床は岐阜県の土岐地域と鳥取・岡山県境の人形峠地域の2ヶ所しかなかった。土岐地域のウラン鉱床は土岐・瑞浪市境付近の山地内にあり、周辺に広く分布する土岐花崗岩からウラン・トリウムなどの放射性元素が地下水に溶け出し、それがこの地域の瑞浪層群の下部層をなす土岐夾炭累層内に固定され濃集されてできたものである。この鉱山はそれらの採掘をめざしたが、採算のあう埋蔵量ではなかったため稼働することなくウラン探鉱を終了している。1986(昭61)年からは鉱山の坑道を放射性物質の処理にかかわる基礎実験施設として利用し、おもに岩盤中の物質移動に関する研究などに活用されてきた。それらも2004(平16)年3月に終了し、2010(平22)年からは閉山措置が始まり、2015(平27)年2月に坑道を埋める作業が完了し、2016(平28)年3月には地上施設の解体撤去作業も完了して閉山された。
土岐市泉町河合にあった東濃鉱山の坑道内部
(撮影:小井土由光)
 
ジオ点描
   ウランは地球上に天然に存在している元素のうち、大量に存在しているものとしては原子番号が最も大きく、原子量が最も大きい元素である。全ての同位体が放射性核種であり、ウラン238(半減期は約44億6800万年;約99.3%)とウラン235(半減期は約7億380万年;約0.7%)がおもな同位体である。このうち後者が核分裂する放射性同位体であり、原子炉での核燃料や核兵器の主要な材料として用いられる。
 
文 献  
土岐花崗岩
土岐市周辺に東西約12km×南北約14kmの規模で分布し、周辺に分布する美濃帯堆積岩類に明瞭な熱変成作用を与えている。おもに塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩からなる。苗木花崗岩とほぼ同じ時期によく似た岩相・特徴をもつ花崗岩体として形成され、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。ウラン・トリウムの含有量が多く、それらが被覆層の瑞浪層群の土岐夾炭累層に濃集してウラン鉱床を形成している。
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
土岐夾炭累層
瑞浪地域に分布する瑞浪層群のうち下部層を構成し、瑞浪市や土岐市一帯に広く分布する。層厚は約140mで、おもに泥岩・砂岩・角礫岩からなり、褐炭・凝灰岩をはさみ、冷温な気候を示す植物化石が含まれる。厚い褐炭層が何枚かにわたり分布し、その一部は土壌改良剤などとして新日吉鉱山で採掘されている。礫岩は基底部にあり、そこに形成されウラン鉱床を採掘しようとしたのが東濃鉱山である。


地質年代