鉱山名 伊西陶石 いにしとうせき
所在地 飛騨市神岡町伊西
 対象資源 陶石 (廃鉱)
概 要
   美濃帯堆積岩類の飛騨花崗岩類を貫いて流紋岩質火山岩(所属不明であるが、おそらく後濃飛期火成岩類)の幅約14mの岩脈が熱水変質作用を受けて形成された陶石で、鉱石中に石英斑晶が少なく、長石が絹雲母に変化している。ほぼ同様の産状を示すものに渋草陶石がある。
伊西陶石の標本
(撮影:石橋祥二)
 
文 献 下坂康哉(1978)東海北陸地方の窯業原料.地質ニュース,283号,50-62頁. 1981年当時の伊西陶石の採掘現場
(撮影:鹿野勘次)
 
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。

後濃飛期火成岩類
飛流紋岩の岩体周辺にあって、それとよく似た岩石で構成されている火成岩体として、北西側に庄川火山-深成複合岩体、西側に奥美濃酸性岩類と白鳥流紋岩、北東側に大雨見層群と笠ヶ岳コールドロンがそれぞれある。それらの火成活動史が明らかにされるとともに、多くの年代測定値が得られるようになったことで、その主要な活動時期が濃飛流紋岩より新しい古第三紀であることが明確となった。それらをここでは後濃飛期火成岩類と呼ぶ。これらのうち多くの岩体は火山岩類と深成岩類からなる火山-深成複合岩体を構成している。
陶石
単一で窯業原料となる白色の岩石に対する俗称であり、自らがもたらした熱水により火成岩自体が変質して微粒の石英と絹雲母を主成分とする岩石となっている場合が多い。
渋草陶石
微細な石英や長石からなる珪長質火山岩(おそらく大雨見山層群に属する岩脈)の幅7~17mの岩脈が数本にわたり飛騨帯構成岩類の飛騨花崗岩類を貫いており、それらが熱水変質作用を受けて形成された陶石で、長石のほとんどが絹雲母に変化している。この地域の周辺には類似の陶石鉱床があり、ほぼ同様の産状を示すものに伊西(いにし)陶石がある。
地質年代