鉱山名 恵比寿鉱山 えびすこうざん
所在地 中津川市蛭川和田
 対象資源 タングステン・モリブデン・ビスマス (廃鉱)
概 要
   苗木花崗岩濃飛流紋岩の接触部に気成鉱床あるいは熱水鉱床として形成されたタングステン-石英脈を稼行対象とした鉱山であった。タングステンの主要な鉱石鉱物である灰重石・鉄重石・マンガン重石やモリブデンの硫化鉱物である輝水鉛鉱、蒼鉛鉱物、錫石などを産出した。1950年代にはタングステン精鉱で13~40トンの生産があったが、1963(昭38)年に閉山となった。隣接する遠ヶ根鉱山と共に東濃地方の代表的な鉱山であり、名称は所有した会社名による。
恵比寿鉱山から産出した鉄マンガン重石
(提供:岐阜県博物館,撮影:棚瀬充史)
 
文 献 恵比寿鉱山跡地付近にある鉱山関連建物とその表札
(撮影:小井土由光)
 
苗木花崗岩
中津川市苗木付近を中心に濃飛流紋岩の分布域の南部に広く分布し、中央部においても濃飛流紋岩の地下に広く伏在して分布する。濃飛流紋岩の少なくともNOHI-5までを貫き、NOHI-3、NOHI-4およびNOHI-5と火山-深成複合岩体を形成していると考えられている。塊状で、一部斑状の細粒~粗粒黒雲母花崗岩および角閃石含有黒雲母花崗岩からなり、放射線で黒~暗灰色になった石英を多く含み、脈状ないし晶洞状のペグマタイトに富むことを特徴とする。
濃飛流紋岩
濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
気成鉱床
マグマが固結していく末期にマグマから分離した高温のガス成分によって鉱物が生成したり、岩石が変質したりする作用で形成された鉱床をいう。現在では深成熱水鉱脈鉱床とほぼ同義に扱われることが多く、花崗岩質マグマ中の水分と揮発成分が岩石中のさまざまな金属元素を溶かしながら周辺にできた割れ目に侵入した後、温度低下に伴って沈殿してできる鉱床である。
熱水鉱床
地殻内に存在する高温水溶液(熱水)から沈殿生成した鉱床で、熱水はおもにマグマ活動に由来しており、既存の岩石と反応することで変質作用を与えたり(熱水変質作用)、岩石を溶解して交代作用を起こしたり、溶解している金属種を沈殿させることで形成される。大きく、スカルン鉱床、鉱脈型鉱床、黒鉱鉱床に分けられる。
遠ヶ根鉱山
濃飛流紋岩にともなわれる花崗閃緑斑岩Ⅱを浅所まで貫いている苗木花崗岩からの熱水により形成された鉱脈型鉱床を稼行対象とした鉱山であった。産出する鉱石鉱物は、鉄重石、灰重石、硫砒鉄鉱、砒鉄鉱、輝水鉛鉱、蛍石、閃亜鉛鉱、モナズ石などである。隣接する恵比寿鉱山と同様にタングステン用の鉱石採掘が中心であったが、硫砒鉄鉱に富むため、精鉱の過程で亜ヒ酸を含む排煙が発生したり、有毒な鉱滓が周辺農地に漏れ出すなどの鉱害をもたらした。1958(昭33)年に閉山となったが、跡地のヒ素汚染問題が残ったために鉱害対策工事が実施され、そのため鉱山の遺構はほとんど残っていない。
地質年代