飛騨帯構成岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
鉱山資料館
神岡鉱山を採掘した神岡鉱業㈱の前身である三井金属鉱業㈱の創業100年を記念して、同社が隣接する「神岡城」とともに建てた施設である。神岡町の町並みを見渡せる高台にあり、小さな2階建ての建物であるが、展示物のほとんどは2階にかなり密に並べられている。江戸時代以降、2001(平13)年に閉山されるまでの神岡鉱山に関連する歴史資料や鉱石・岩石標本などが展示されている。神岡鉱山における採鉱から選錬・精錬・製品に至るまでの作業工程が模型展示やパネル解説されており、閃亜鉛鉱(亜鉛)、方鉛鉱(鉛)、黄銅鉱(銅)、輝水鉛鉱(モリブデン)などの多くの鉱石標本が展示されている。神岡城、旧松葉家とともに飛騨市の文化施設「高原郷土館」として管理運営されており、冬季の12月から3月までは休館になっている。
スカルン鉱床
石灰岩などの炭酸塩岩が花崗岩などの貫入によりもたらされる熱水により交代作用を受けて形成される熱水鉱床の一種で、スウェーデンの鉱山用語に由来している。熱水からもたらされた珪酸(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、鉄(Fe)などの成分と炭酸塩岩が反応して生じたカルシウムまたはマグネシウム質珪酸塩鉱物の集合体をスカルン鉱物といい、単斜輝石、ザクロ石、緑れん石などがある。その際に鉄や銅をはじめ亜鉛や鉛などの有用な金属を含む鉱石鉱物が一緒にもたらされる。
スーパーカミオカンデ
素粒子の1つであるニュートリノ(中性微子)を観測するために旧神岡鉱山の茂住坑の坑道を利用して作られた施設であり、地下1,000mに5万トンの超純水を蓄えた直径39.3m、深さ41.4mの円筒形のタンクが作られ、その内部に11,200本の光電子増倍管が設置してある。それらによりチェレンコフ放射と呼ばれる光を検出し、宇宙の初期に物質が作られる過程や太陽内部の活動を直接知ることなど、いくつかのテーマで研究がすすめられている。1983(昭58)年に設置されたカミオカンデと同じ原理で作られた施設で、大型化・高性能化されている。個別の見学はできないが、教育・研究関係の団体の見学は調整の上、受け入れることもある。
地質年代