対象物  竜馬石 りゅうまいし
場 所 高山市清見町楢谷(ならだに)
 指定者 高山市  指定年月日 1984(昭59)年3月16日
概 要
   郡上と飛騨を結ぶ郡上街道は、現在は“せせらぎ街道”と呼ばれて分水嶺となる西ウレ峠を通っているが、江戸時代まではその東側にある尾根を隔てた竜ヶ峰(りゅうがみね)を通っていた。そこには烏帽子・鷲ヶ岳火山に属する安山岩質の溶岩が分布しており、ミヤマクマザサが生い茂るなだらかな地形を利用して「飛騨共同模範牧場」となっている。その一角にある3.4×2.8m、高さ1mほどの大きさの安山岩の岩塊が指定されている。この岩塊にはクマザサと馬にまつわる伝説があり、表面に不規則な紋様がみられる。この紋様は溶岩の冷却時にしばしば形成される柱状節理の断面のようにも見えるが、地表の温度変化により岩石の表面が伸縮することでできた割れ目であり、粗粒の鉱物や岩片を含むためにその影響を受けやすい岩石であるためにこうした割れ目ができやすいと考えられている。
清見町の飛騨共同模範牧場の一角にある竜馬石(不規則な紋様の割れ目に雪が入り込んでいる)
(撮影:岩田 修)
ジオ点描
   あるものが天然記念物に指定される場合に、その経緯や基準が明確であると指定後に時間が経ってもその評価は比較的容易である。しかしそれらが不明確であると憶測で評価せざるを得なくなり、実際にそうしたものは少なからずある。おそらく指定された当初は何らかの意義などがあったのであろうが、現在では客観的にみてもわざわざ特別扱いをする上での説明がむずかしいものもある。
 
文 献 岩田 修(1999)竜馬石はペトログラフか.飛騨春秋(高山市民時報社),462号, 2-6頁.  
せせらぎ街道
せせらぎ街道は高山と郡上八幡を結ぶ全長約70kmにわたる道路の愛称であり、分水嶺の西ウレ峠より北側の川上(かわかみ)川沿いに渓谷が形成され、紅葉狩りの名所としても知られることから、そこに限って呼ぶことのほうが多い。そのほぼ全域が濃飛流紋岩の溶結凝灰岩と花崗閃緑斑岩Ⅱからなり、とりわけ清見町坂下にある「森林公園」では、川上川に流れ込む支谷が堅固な岩石を削って流れ下り、大倉滝(落差約30m)を中心に“百滝”といわれるほど多くの滝と奇岩からなる渓流景勝地になっている。
烏帽子・鷲ヶ岳火山
郡上市と高山市の境界にまたがり、南北約33km、東西約18kmの広範囲に広がる火山体であり、復元総体積は約66km³とされている。その中央部に南北に流れる一色川により大きく烏帽子岳(標高1625m)と鷲ヶ岳(標高1671m)の山体に分けられており、多くの谷により開析されているため、火山地形はほとんど残されていない。九頭竜火山列における他の火山が溶岩層を主体とする成層火山を形成しているのに対して、火砕流や岩屑なだれによる堆積物をともなう点がやや異なる。大規模な山体崩壊堆積物と水底堆積物を境に古期火山と新期火山に分けられており、前者はおもに山体の西部から北部にかけて分布し、阿多岐層を覆い、角閃石斑晶に富む安山岩質溶岩と同質の火砕流堆積物などからなる。後者はおもに山体の南部から東部にかけて分布し、前者に比べて角閃石斑晶の少ない安山岩類からなり、複数枚の溶岩層やblock and ash flow堆積物などで構成され、それらを覆う土石流堆積物などが山麓部に分布する。



地質年代