対象物  石仏と奇岩群 いしぼとけときがんぐん
場 所 高山市上宝町荒原(あらはら)
 指定者 高山市  指定年月日 1970(昭45)年3月20日
概 要
   大雨見山(おおあまみやま;標高1,336m)の北西麓を流れる蔵柱(くらばしら)川沿いに石仏という地名があり、そこの山裾斜面にある高さ約12mの仏像に似た石柱が「石仏」である。そこから下流側に向かって“仏器岩”、“屏風(びょうぶ)岩”、“駒掛(こまかけ)岩”、“鏡岩”、“箪笥(たんす)岩”といった名前のついた奇岩が山裾に沿って並んでおり、これらの石柱や奇岩が指定されている。いずれも大雨見山層群宮川谷層に属する流紋岩質溶岩からなり、とりわけ青灰色の玉ズイ(石英の微小な結晶の集まり)を含んだ「球顆流紋岩」と呼ばれる岩石からなる。これと同じ溶岩はここより南西に約2kmにある大坂峠近くにも露出し,風化した部分から数cmほどの玉ズイの塊を見つけることができる。この溶岩は比較的軟らかく、風化作用を受けやすいために見る方向によっていろいろな形状に見えることから奇岩としてそれぞれに名称がつけられたものである。
上宝町荒原にある高さ約12mの「石仏岩」
(撮影:木澤慶和)
ジオ点描
   名称の付いた奇岩というのは全国各所にある。それらには故事由来のものもあるが、多くは見た目の形態に由来するようである。それらは削られたり崩壊していく途中の段階を見ていることが多く、今後もそれらは継続していくから見た目が変化していって当然である。もともと思い込みの世界から生まれた名称であるから、自然の流れの中では“変わり果てたすがた”は当たり前と考えるべきである。
上宝町荒原の山すそに並ぶ石仏岩(左端)と奇石群
(撮影:木澤慶和)
文 献
大雨見山層群
飛騨市古川町東部から高山市上宝町東部へかけての地域に飛騨外縁帯構成岩類、美濃帯堆積岩類、手取層群を不整合に覆って約22kmにわたりほぼ東西方向に分布する。流紋岩質の溶結凝灰岩など南隣に約4km隔てて分布する濃飛流紋岩に類似した岩石類からなるが、流紋岩溶岩、玄武岩質安山岩溶岩なども見られる。下位から、宮川谷層、明ヶ谷溶結凝灰岩層、木地屋層の3層に区分され、上部層ほど岩体の東部に分布する。
宮川谷層
大雨見山層群の岩体西半部に広く分布し、一部は東半部にも分布する。基底部に淘汰の悪い崖錐角礫岩を局所的にともない、砂岩や泥岩からなる砕屑岩層、流紋岩質の火山礫凝灰岩層、流紋岩質溶岩層などからなる。層厚は約500mである。



地質年代