対象物  明世化石  あけよかせき
場 所 瑞浪市明世町、松ヶ瀬町、薬師町
 指定者 岐阜県  指定年月日 1957(昭32)年3月25日
概 要
    瑞浪市明世町にある通称“へそ山”一帯や土岐川沿いの松ヶ瀬町・薬師町一帯に広く分布する瑞浪層群明世累層に多種類で多量に含まれる中新世の海成化石群が指定されている。それらには巻貝類、二枚貝類、腕足類、甲殻類、魚類などのほかに哺乳類や植物も含まれ、大型哺乳類としてデスモスチルスのような奇獣の化石を産することでも知られている。明世町にある瑞浪市化石博物館にはこれらの化石が数多く展示され、それらを通して瑞浪地域の自然の移り変わりがわかりやすく解説されている。なお、瑞浪市指定の天然記念物として「瑞浪化石産地」(1957(昭32)年3月25日指定)があり、それには明世累層以外の瑞浪層群の地層や鮮新世の瀬戸層群からの化石も含まれ、指定地域の範囲がやや広い。
瑞浪市化石博物館の化石洞窟に露出する貝化石
(撮影:木澤慶和)
 
ジオ点描
   同じ貝類化石であっても古生代のものと新生代のものではまったく異なる。生息時代が異なるのであるから生物種が異なることは当然として、見た目の受ける印象がまったく異なることが違いを際立たせている。形態は貝殻でも、古生代のものは黒色の硬い“石”であり、新生代のものは日ごろ見かけるものとあまり変わらない白色の“貝殻”である.。
瑞浪市明世町における瑞浪層群の明世累層から産出した“月のおさがり”と呼ばれる巻貝ビカリア
(撮影:木澤慶和)
 
文 献 糸魚川淳二 (1980) 瑞浪層群の地質.瑞浪市化石博物館専報,1号,1?50頁.
糸魚川淳二ほか(1981,1982,1985)瑞浪層群の化石.瑞浪市化石博物館専報,2, 3-A,3-B,5号.
 
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
明世累層
瑞浪地域に分布する瑞浪層群のうち中部層を構成し、瑞浪地域の全域にわたり層厚200~250mで分布する海成層で、分布域の中心部と周縁部で岩相が大きく異なる。中心部では全体に凝灰質で、無層理の泥質細粒砂岩、シルト岩~細粒砂岩、軽石質凝灰岩と細粒凝灰岩~凝灰質泥岩の互層などが漸移的に積み重なり、周縁部では礫岩を含む砂岩、砂岩泥岩互層などからなる。大型哺乳類化石としてデスモスチルスやパレオパラドキシアが、周縁部の宿洞(しゅくぼら)相と呼ばれる砂岩層には大型有孔虫化石のミオジプシナがそれぞれ含まれることで知られ、全体に300種を超える貝類化石が産出する。
デスモスチルス
中新世前期から中期にかけて北太平洋沿岸地域に生息し、海岸や浅海で暮らしていた哺乳類で、象牙質の芯をエナメル質が取り巻いた円柱がいくつも束になった独特の形状をしている頬歯に特徴がある。そのため、ギリシア語で「束ねられた(デスモス)柱(スティルス)」を意味している学名を与えられ、分類上も“束柱目”にされている。体長1.8mほどのカバに似た体形をもつと推定されている。当初は歯の化石だけがみつかったが、瑞浪層群の明世累層から頭骨化石が最初に発見され、後に樺太から全身骨格が発見されている。同じ束柱目に属するパレオパラドキシアよりも特殊化した種類とされている。
瑞浪市化石博物館
瑞浪市周辺に分布する瑞浪層群から産出した化石を中心に収蔵・展示・研究を行っている施設である。1971(昭46)年に始まった中央自動車道の建設工事にともなって瑞浪層群が大規模に掘削され、保存のよい貴重な化石が大量に産出したことで、それらを整理して展示する施設として設置された。収蔵・展示だけでなく、化石に関する優れた研究をすすめ、成果を公表している機関として貴重な役割を果たしている。
瀬戸層群
東海層群のうち濃尾平野の地下を含めて伊勢湾以東の地域に分布する地層群で、岐阜県地域では東濃地方に分布し、下部層をなす土岐口陶土層と上部層をなす土岐砂礫層からなる。この地域では火山灰層がほとんど含まれないことで、内部層序あるいは地層対比がむずかしく、近接した地域でも堆積物相互の関係が明確にできない。
地質年代