対象物  平貝戸の化石株 ひらかいどのかせきしょう
場 所 可児市平貝戸
 指定者 可児市  指定年月日 2002(平14)年2月27日
概 要
    可児市平貝戸の可児川河床に分布する瑞浪層群中村累層の中から突き出るように露出した大木の珪化木が指定されている。この大木は根元直径約3×2m、残存高約1.5mの大きさで、メタセコイアと考えられている。これとほぼ同様に中村累層の中から突き出るように露出したものとして木曽川化石林が知られている。これは1994(平6)年夏の異常渇水時に木曽川の水位が極端に低下したことで旧国道21号が架かる太田橋下流の両岸に計425本の化石株が露出したものである。
可児市平貝戸の可児川河床にある化石株
撮影:鹿野勘次)
ジオ点描
   化石林は地質時代の森林が直立してそのまま地層中に保存されたものであり、急激な沈降や埋没によって形成されることが多い。生息していた場所にあった現地性の化石ということになり、示相化石として古環境や古生態を推定するうえで有効な化石となる。これに対して多くの植物化石は、葉や幹がバラバラになって生息していた場所から離れてしまった異地性の化石であり、その役割はかなり異なる。
 
文 献  
瑞浪層群
新第三紀の中新世に西南日本の古瀬戸内海と呼ばれる海に堆積した地層群の一つで、岐阜県の中濃地方から東濃地方へかけての可児・瑞浪・岩村の3地域に分かれて分布する。可児地域では下位から蜂屋累層、中村累層、平牧累層に、瑞浪地域では同じく土岐夾炭累層、本郷累層、明世累層、生俵累層に、岩村地域では同じく阿木累層、遠山累層にそれぞれ区分されている。これらは、大きくみると淡水域から汽水域、海域へと堆積環境が変化していったが、設楽層群などの他地域に分布する地層群に比べると浅海性の傾向がみられる。
中村累層
可児地域に分布する瑞浪層群のうち中部層を構成し、御嵩町・可児市・美濃加茂市南部に広く分布する。層厚は約120mで、礫岩や凝灰質砂岩・シルト岩互層からなる下部層と褐炭層をはさむ凝灰質砂岩・シルト岩からなる上部層とに分けられている。哺乳動物化石としてサイ、バク、シカなどが産出したことで知られており、湖沼性の貝類化石や寒冷性の植物化石も多く含まれる。御嵩亜炭鉱群はこの褐炭層を採掘していた。
珪化木
地層中に埋まった樹木の細胞内や細胞壁に珪酸(SiO₂) 分がしみ込んで、それと置き換えられたもので、実際に置き換えられた珪酸のほとんどは非結晶のオパールやメノウの形で固定されている。
木曽川化石林
1994(平6)年夏の異常渇水により木曽川の水位が異常に低下したことで、太田橋下流の木曽川河床から合計425本の化石林が立ったままの状態で発見された。含まれている地層は瑞浪層群の中村累層で、樹径が1cmから1mほど、高さが最大で約50cmであり、その規模は日本最大級である。化石樹木のおもな種類は温暖な地域だけに生息するアオギリ科の仲間で、現在の日本には分布していない。発見された化石林のうち木曽川右岸(北岸)の河原が化石林公園として整備され、地層中に埋まった自然な状態の化石林を見ることができる。
示相化石
すべての生物は環境に適応して生活していたはずであるから、すべての化石はその生息環境を示すが、それらの中で生息条件が限定されていること、現生種との関係から生息環境の推察が可能であること、現地性のものであることなどの条件を持ち、それが含まれる地層の堆積環境を明確に示す化石を指す。
地質年代