奥飛騨火砕流堆積物
飛騨山脈の樅沢(もみさわ)岳(標高2755m)周辺から南方へ蒲田(がまた)川流域や笠谷流域の山腹に分布し、水鉛谷給源火道から噴出して現在の地形に近い河谷に沿って流れた火砕流によりもたらされた堆積物である。推定分布面積70km²以上、推定総噴出量10km³以上、最大層厚約200mで、おもに流紋岩質の溶結凝灰岩からなり、含まれる結晶片は斜長石・石英・黒雲母に富み、柱状の角閃石や輝石をともなう。
水鉛谷給源火道
蒲田川左俣谷支流の水鉛谷の南側において奥丸沢花崗岩の中に径約600×500mの規模で楕円形をなして尖塔状の形態をとってそびえ立つ。おもに多斑晶質の花崗斑岩からなり、周縁部に流紋岩質凝灰岩、デイサイト質ないし安山岩質凝灰岩などが分布し、珪長質岩と苦鉄質岩が混ざって縞模様をなす部分も認められる。火山岩類については構成鉱物の化学組成などから奥飛騨火砕流堆積物と同源の産物であることが明らかにされている。
高山軽石層
樅沢(もみさわ)火山の水鉛谷給源火道からもたらされ、飛騨地方各地の古い河岸段丘の上や緩やかな山麓に分布している。厚さ50cmほどでキラキラと輝く黒雲母を多量に含む火山灰層で、奥飛騨火砕流堆積物と同じ鉱物の特徴をもち、同じ特徴をもつ火山灰層が長野県側では「大町テフラ(クリスタルアッシュ)」と呼ばれている。通常の降下火砕堆積物は東方へ向かって飛ばされるが、それとは大きく異なる南西方へも飛んで郡上市の上野高原にも分布していることから、かなり大規模な噴火活動でもたらされた火山灰のようである。
地質年代