穂高安山岩類
槍-穂高連峰の山稜部を構成し、おもにデイサイト質の溶結凝灰岩からなり、流紋岩質火砕岩、安山岩質溶岩、砕屑岩類をともない、それらに閃緑斑岩や文象斑岩の岩脈・岩床が貫入している。これらは「穂高コールドロン」と呼ばれる南北約19km、東西約6kmの細長いコールドロンを最大層厚3,300m以上で埋積しており、槍-穂高火山の一員として、いわゆる“カルデラ埋積火山岩類”に相当し、そこから溢流したいわゆる“アウトフロー火砕流堆積物”が高山市地域に広く分布する丹生川火砕流堆積物である。
奥丸沢花崗岩
高原川支流の蒲田川上流部にある奥丸山(標高2439m)周辺から県境の西蒲尾根周辺へかけて東西約2km×南北約8kmの規模で南北方向に細長い岩株状の岩体として分布する。おもに中~細粒の黒雲母花崗岩からなり、石英斑岩から粗粒花崗岩までいろいろな岩相を示す。笠ヶ岳コールドロンを構成する火山岩類に密接にともなわれ、それらと複合岩体をなす深成岩体と考えられている。
上宝火山
高山市奥飛騨温泉郷福地の南方にある貝塩(かいしお)谷北側山腹に分布する貝塩給源火道から流出した福地凝灰角礫岩層・上宝火砕流堆積物が形成したであろう火山体であり、「上宝・貝塩火山」と呼ぶこともある。現在は飛騨山脈の上昇隆起にともない火山体は削剥されてしまい残っていない。この火山から噴出した降下火砕堆積物は「貝塩上宝テフラ」と呼ばれる広域テフラを形成して中部・関東一円に分布する。
火砕流
火山噴火において噴煙と同じものが溶岩のように地面に沿って流れる現象である。噴煙の中には火山灰(ガラス片)のほかにマグマのかけらに相当する軽石や噴火の際に取り込まれる既存の岩石などが入っており、それらの固体をまとめて火山砕屑物といい、それらが火山ガス(ほとんど水蒸気)と混ざった状態で地表面に沿って流れる現象である。これによってもたらされた堆積物を火砕流堆積物という。火砕流はきわめて流動性に富む状態で運ばれるために、高温状態のまま高速で運ばれることになり、溶岩流などの噴火現象に比べるとはるかに危険な現象と理解しておかなければならない。
泥流
礫、砂、泥などの砕屑物が水と混ざって流れ下る場合に、泥質分を多く含み、粗粒の礫質分の少ない流れを指す。礫質分が多いと土石流と呼ぶことがあるが、明確な境界があるわけではない。火山砕屑物が関与すると火山泥流と呼び、その場合には必ずしも泥質分が卓越しているとは限らず、土石流に近い状態もある。インドネシアの火山体周辺で頻発することでラハーという用語が同義語として使われることがある。水ではなく気体(空気)と混ざった流れの場合には岩屑なだれという。
地質年代