地層名 原山礫層【cg3】 はらやまれきそう
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代表地点 高山市新宮町の原山市民公園
形成時期 更新世中期
概要    高山盆地西方にある丘陵地にあたる旧原山スキー場(現原山市民公園)を作る緩斜面に分布する。緩斜面の南側にある山地を構成する濃飛流紋岩花崗斑岩の亜円~亜角礫を主体とする層厚約20mの礫層で、礫は風化してやや軟らかくなっており、礫径は10~15cmであるが、70cmにも達するものが含まれる。分布域の南側に推定される原山断層の縦ずれ運動にともなってもたらされた崖錐性堆積物であり、江名子(えなこ)断層の運動にともなって形成された江名子礫層と同じ性格の堆積物である。
文献
  • 河田清雄(1982)三日町地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅),地質調査所,72頁.
  • 写真 高山市の旧原山スキー場西方に露出する原山礫層(下半部にある丹生川火砕流堆積物を覆っている)
    (撮影:鹿野勘次)
    写真 準備中
    濃飛流紋岩
    濃飛流紋岩は、岐阜県の南東端にあたる恵那山(標高2191m)付近から北部の飛騨市古川町付近へかけて、幅約35km、延長約100kmにわたり北西~南東方向にのび、岐阜県の約1/4の面積を占める巨大な岩体である。この岩体を構成する岩石のほとんどは、火砕流として流れ出た火山砕屑物がたまって形成された火砕流堆積物からなり、しかもその大部分は堅硬に固結した溶結凝灰岩になっており、厚さ数百mで、水平方向へ20~60kmの広がりをもち、岩相・岩質が類似した火山灰流シートとして何枚にもわたって重なりあっている。それらは大きく6つの活動期(NOHI-1~NOHI-6)に区分されており、岐阜県内にはNOHI-6だけが分布しない。これらの火山岩類には花崗岩類が密接にともなわれ、それらを含めて大きく2期(第1期火成岩類・第2期火成岩類)に分けられる火山-深成複合岩体を形成している。第1期の活動は白亜紀後期の約8,500万~8,000万年前にあり、NOHI-1とNOHI-2の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。第2期の活動は約7,500万~6,800万年前にあり、NOHI-3~NOHI-5(おそらくNOHI-6)の活動と引き続く花崗岩類の活動があった。これらは活動の場所を南部から北部へと移しながら巨大な火山岩体を作り上げた。
    花崗斑岩
    濃飛流紋岩のほぼ岩体全域および岩体周辺の美濃帯堆積岩類の分布地域にわたり小規模な岩脈として分布し、しばしば平行岩脈群をつくる。岐阜県内に分布する代表的なものだけを挙げてると、上之保(かみのほ)-鹿山(かやま)平行岩脈群・東沓部(ひがしくつべ)岩脈群・初納(しょのう)岩脈群・日出雲(ひずも)岩脈群・中之宿岩脈・青屋弧状岩脈のほかに釜戸・大洞谷・門坂(かどさか)・三間山(さんげんやま)・宇津江(うつえ)・黒内の各岩体がある。全体として濃飛流紋岩のどの層準よりも新しい時期に貫入し、濃飛流紋岩を貫く苗木花崗岩などの花崗岩類中にはまったく分布しないことから、花崗岩類の定置以前に貫入したと考えられている。岩相は全体を通じてほとんど一定しており、灰白色の石基中に石英・カリ長石・斜長石・黒雲母およびまれに角閃石の自形斑晶を含む。カリ長石や斜長石の斑晶は長径1~3㎝である。周縁相として斑晶がやや小型化し、石基が隠微晶質となる石英斑岩質を示すものがみられる。
    原山断層
    原山断層は、高山市西之一色町付近から高山市清見(きよみ)町塩谷(しおや)にかけて東北東~西南西方向に延びる全長6kmほどの短い断層で、原山スキー場となっている緩傾斜地と山地との境界がほぼ直線状になっており、ここに断層が通ると推定されている。断層が縦ずれ運動を繰り返したことで南側が250mほど上昇して松倉山(標高857m)の山地が形成されたと推定されているが、断層は南側の山地から崩れてきた砂礫層の下に隠されているため、その詳細についてはよくわかっていない。原山断層は、「国府断層帯」と「江名子・大原(おっぱら)断層帯」の間にあり、両断層帯とは区別されながらも、その延びの傾向は似ており、高山盆地西部の地形を作り出す上で大きな役割を果たしている。
    江名子断層
    江名子断層は高山盆地の南側を画する大西山地の北側山麓を高山市塩屋町東部から南西へ向かい、江名子町を通って飛騨一之宮へと約13kmにわたり延び、大西山地の南西へ向かって宮川断層から大原(おっぱら)断層へと続き、これらをまとめて「江名子・大原断層帯」と呼ぶこともある。大西山地の南側山麓には宮峠断層が江名子断層とほぼ平行に走り、この2つの断層に挟まれた地域が断層運動で隆起して一般に「位山(くらいやま)分水嶺」と呼ばれる分水嶺山地が誕生した。それが誕生する以前の約200万年前に形成された松原礫層は分水嶺山地の上にもその両側にも分布し、その中には分水嶺より南側に広く分布する濃飛流紋岩の礫を多量に含んでおり、現在の飛騨川最上流部は宮川を経て日本海へ流れていたことになる。高山盆地側から眺める大西山地の北側斜面は江名子断層の断層崖になり、そこには主断層や数本の派生断層により最大で150mにも達する幅広い破砕帯が形成されており、これに沿って谷・尾根の右横ずれ屈曲が顕著に見られ、その変位量は最大で500mに達する。縦ずれ変位量は、断層をはさんで両側に分布する松原礫層や丹生川火砕流堆積物の分布高度の差から300m以上である。
    江名子礫層
    高山市山口町付近を中心に、大西山地北麓の江名子断層に沿う幅約2kmの範囲に分布する。層厚は約20mである。ほとんどが大西山地を構成する美濃帯堆積岩類の礫からなり、丹生川火砕流堆積物の礫がわずかに含まれる。径10~20cmの角礫からなり、淘汰が悪く、風化してやや軟らかくなった礫が多い。江名子断層の運動にともなって大西山地が急激に上昇隆起したことで供給された崖錐性堆積物である。

    地質年代