項目 地震断層観察館 じしんだんそうかんさつかん
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地点 本巣市根尾水鳥(みどり)
見学地点の位置・概要    水鳥断層崖の南東端にあるピラミッドの形をした屋根の建物が地震断層観察館である。
見学地点の解説    この建物には地下観察館、地震資料館、地震体験館の3施設があり、それぞれに役割があるが、主役は地下観察館である。地表に現れた約6mの段差がそのまま地下断面として直接観察できるようになっており、この付近の基盤岩類を構成する美濃帯堆積岩類とそれらを覆う段丘礫層がトレンチ掘削された断面として露出している。両者のほぼ水平な境界線がほぼ垂直の断層を境に約6mずれており、断層面付近の幅数十cmの範囲だけにある礫層の大きな礫が引きづられるように縦方向に並んでいる様子がわかる。これは縦ずれが狭い幅で一瞬にして起こったためで、それだけ大きな力が働いたことも物語っており、その際の振動が大きな地震(濃尾地震)を発生させたことになる。言い換えれば、この断層面は濃尾地震のほぼ震源と考えてよく、それが地表にきわめて近かったためにずれた面が地表にまで達したことになる。
ジオの視点    根尾谷断層においてはかなり多くの地点でトレンチが掘られ、それらの詳細な調査から多くの成果が得られたが、そのほとんどは農耕地等の私有地で掘削されているため、調査終了とともに埋め戻されている。ところがこの場所は当時の根尾村の村有地であったこともあり、トレンチ調査後に埋め戻さずにそのままの状態にして保存され、濃尾地震100周年を記念して当時の根尾村が建設した施設となった。こうした施設は世界的にも珍しく、学術的にも価値の高い施設となっている。
写真 地震断層観察館の外観
(撮影:小井土由光)
写真 地震断層観察館内部の断層掘削面
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。




地質年代