項目 組織地形 そしきちけい
関連項目 事項解説>地形・鍾乳洞>山稜地形>各務原の組織地形
地点 各務原市須衛稲田7 市複合福祉施設「福祉の里」駐車場
見学地点の位置・概要    各務原市各務おがせ町から関市迫間へ向かう市道は市境にあたる山嶺を岩坂トンネルで貫いている。その手前の西側山麓に各務原市の複合福祉施設「福祉の里」があり、その西端にある駐車場から西方に組織地形を作る尾根が望める。
見学地点の解説    各務原市街地の周囲に見られる山地は、美濃帯堆積岩類のチャート層と砂岩層が交互に分布し、それらが大きく曲げられて巨大な褶曲構造を形成し、西側に開いた舟底型をなして東西方向に延びた形をして分布していることで作られている。その北側にあたる部分において硬いチャート層が2列の尾根をつくり、それらに挟まれる砂岩層が低地を形成して組織地形をなし、そのうちの北側の尾根が関市との境界にある山嶺を作っている。この組織地形は高所から俯瞰するとわかりやすいが、その場所までにたどり着くまでに時間を要するため、2列の尾根に挟まれた低地から眺めることで組織地形の概要を把握することにする。駐車場から西方を望むと北側と南側に高い山嶺が見え、それらはともにチャート層で構成されており、それらの間の低地は砂岩層で構成されている。
ジオの視点    一般に、硬い岩石と軟らかい岩石が交互に並ぶなどの地質構造を反映して、削剥される程度の差により顕著に表れた凹凸地形のことを組織地形という。美濃帯堆積岩類では、浸食に強く、削り残された硬いチャート層と相対的に軟らかく、削られやすい砂岩層の列が作る組織地形がよく知られており、こうした地形は各務原市北部地域のほかに、川辺町北部地域でも見られる。
写真 市施設「福祉の里」の駐車場から西方を望む(両側に見える尾根にチャート層が、谷部に砂岩層がそれぞれ分布している)
(撮影:小井土由光)
写真 関市迫間の「不動の展望」付近から南東方を望む(ゴルフ場がある中央の谷部とその両側の尾根で組織地形を作っている)
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。




地質年代