項目 犬山礫層 いぬやまれきそう
関連項目 凡例解説>第四紀堆積層>濃尾平野地域など>>扇状地・崖錐・地すべり堆積層および低位段丘堆積層
地点 各務原市鵜沼大伊木町 木曽川河岸
見学地点の位置・概要    伊木山(標高173m)の西側にある大牧団地の裏において木曽谷層が見られる崖のある栗林を抜けると「小山湊跡」の史蹟案内板がある。そこから車止めの柵がある下り坂を木曽川の河川敷へ向かうと、河川敷へ出る直前の左側のヤブの奥に崖があり、そこに犬山礫層が見られる。
見学地点の解説    この崖で見られる犬山礫層は、礫径5~20cm程度の円摩された礫が密に並び、それらの間に砂が詰まっており、現在の木曽川の河原で見られる河床礫とそれほど変わらないように見える。礫種は美濃帯堆積岩類のチャートや砂岩、濃飛流紋岩、花崗岩などである。この礫層は各務原台地の縁辺部や対岸の犬山地域に厚さ5mほどで分布する段丘礫層で、ここでは見えないが、下位に木曽谷層が分布している。また、この礫層は約5万年前に形成された木曽川泥流堆積物に覆われており、それ以前に形成されたものである。ただし、残念ながらその関係もここでは見られない。
ジオの視点    木曽谷層が形成された間氷期が終わり、引き続く氷期になると海水が氷床として固定されることで海面が下がり、それにともなって河口の位置が下流側へ移動していった。同じ地点で見ると、そこは浸食される場所へと変わっていったことになる。木曽谷層で構成されている各務原台地は浸食されていき、そこにできた当時の河床面に堆積した礫層が犬山礫層である。
写真 各務原市鵜沼大伊木町の木曽川河岸近くに露出する犬山礫層
(撮影:小井土由光)
写真 犬山礫層の近接写真
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
木曽谷層
新期御嶽火山の継母岳火山群の活動により発生した岩屑なだれおよび泥流として木曽川沿いに流れ下り、木曽谷を埋積した堆積物である。最大層厚約50mで、おもに粗粒砂層ないし砂礫層からなり、新期御嶽火山の初期に噴出したPm-1あるいはPm-3と呼ばれる軽石を含むことを特徴としている。中津川市坂下の河岸段丘(松源地面)をはじめとして、加茂野台地や各務原台地などで中位段丘堆積層を形成している。
木曽川泥流堆積物
新期御嶽火山の摩利支天火山群の活動中に発生した大規模な山体崩壊に由来する堆積物で、最初は岩屑なだれとして御嶽山東麓の末川流域に広がり、さらに西野川・王滝川へと下りながら泥流となり木曽川に沿って流れた。泥流相は御嶽火山起源の安山岩岩塊を多量に含む膠結(こうけつ)度の高い基質からなる。中津川市の坂下の河岸段丘(高部面)に載り、美濃加茂市の加茂野台地や各務原市の各務原台地にまで200km以上も流下し、木曽谷層を覆っている。県内での層厚は10~30mである。


地質年代