項目 砂岩・泥岩層 さがん・でいがんそう
関連項目 凡例解説>美濃帯堆積岩類>砂岩・泥岩
地点 加茂郡坂祝町勝山 木曽川河床
見学地点の位置・概要    各務原から美濃加茂方面へ向かう国道21号は、鵜沼・坂祝トンネルで坂祝町の北部を迂回するバイパスとなって国道248号バイパスと合流しているが、もともとは日本ライン沿いの峡谷を抜けて美濃加茂方面へ向かうルートであった。その途中の坂祝町中心部において、勝山交差点前の堤防を越えて木曽川河川敷の草地へ下りて、そこを河岸まで抜けると砂岩層の岩場が広がっている。
見学地点の解説    草地の前に広がる岩場は、幅数十mにわたり塊状の中粒~粗粒の砂岩層からなる。砂岩はかなり堅硬でほとんど風化されておらず、その上流側の岩場を構成するチャート層が凹凸に富む表面をなすのに比べて、比較的なめらかな表面の様相をなし、かなり異なっている。砂岩には石英や長石類の砂粒のほかに泥岩の岩片が多く含まれ、かなり均質に見える。砂岩層を下流側にたどると、全く異なる色調の黒色をなす泥岩層が露出している。泥岩層は全体に均質な泥岩からなるのではなく、葉片状の割れ目ができている比較的厚い泥岩部分のほかに、細粒の砂岩と互層をなしたり、割れ目の少ない塊状の細粒砂岩となっている部分もある。なお、ここより400mほど上流の岩場にインジェクタ層がチャート層に挟まれて存在していたが、足場が悪く、現場へ容易に近づくことは難しい。
ジオの視点    美濃帯堆積岩類における砂岩・泥岩は、海洋プレートが大陸縁辺に近づき、海溝で沈み込んでいく際に陸域から供給される砕屑物である。それぞれが単独の地質体を作る場合もあれば、互層をなす場合もあり、前者においては厚い砂岩層としてしばしば産する。これらの多くは海底地すべりにより混濁流としてもたらされたタービダイトを形成し、細粒物(泥)と粗粒物(砂)に分別されて堆積したものである。これらのうち泥岩は、同じ美濃帯堆積岩類の泥岩であっても、岐阜市の金華山における優黒色泥岩(深海底堆積物)とはまったく形成過程が異なる。
写真 坂祝町勝山の木曽川河床に露出する砂岩層
(撮影:小井土由光)
写真 坂祝町勝山の木曽川河床に露出する泥岩層
(撮影:小井土由光)
インジェクタ層
木曽川が美濃帯堆積岩類を削り込んで流れる日本ラインにはチャートや砂岩が分布し、それらがいろいろな形状をなして分布する景勝地を形成している。そのチャート層にはさまれる粘土層の中から、隕石衝突により形成されたと考えられるスフェルールと呼ばれる球状粒子が2010年に発見された。この球状粒子には地球表層には極めて微量にしか存在しない白金族元素が最大で3桁も多く含まれていることが明らかにされ、巨大な隕石の衝突によりもたらされたものと考えられている。こうした隕石衝突によりクレーター内部から放出された物質が堆積してできた地層をインジェクタ層という。チャート中に含まれる放散虫からこのインジェクタ層の年代が決まり、この隕石衝突が三畳紀後期(約2億1500万年前)に起こり、それにより地球規模である種の生物絶滅が起こり、その後の生物進化へ影響していったことなどが議論されている。
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
混濁流
砕屑物と水の混合物が重力によって流れ下る現象の一つで、乱流状態にある水が多量の砕屑物を浮かせたまま高密度状態で流れるもので、海底の斜面にいったん堆積したものが地震などを引き金にして斜面を流れ下るときにみられる。乱泥流、懸濁流ともいう。こうした運搬機構で堆積した堆積物がタービダイト(乱泥流堆積物)である。
タービダイト
混濁流で深海底に運ばれた陸源性の堆積物で、乱泥流堆積物ともいう。一般に、下位層を浸食し、流動にともなうソールマークが下底面に見られること、上方へ向かって砂岩から泥岩へ移化していく級化成層が顕著に見られ、その互層として産するなどの特徴をもつ。

地質年代