項目 湯ヶ峰火山 ゆがみねかざん
関連項目 凡例解説>第四紀火山>その他>湯ヶ峰火山
地点 下呂市幸田 六見橋(むつみばし)付近
見学地点の位置・概要    JR高山駅の下呂駅前を通る県道88号下呂小坂線を南下すると、飛騨川を渡って下呂の中心街へ行く六見橋(県道440号乗政下呂停車場線)がある。その付近から飛騨川対岸の山稜を眺めると、崩壊した山肌をもつ峰が見える。それが湯ヶ峰火山である。
見学地点の解説    湯ヶ峰火山は下呂温泉の東方にある湯ヶ峰(標高1,066m)の山頂部を構成する径1kmほどのきわめて小さい火山体であり、無斑晶質のデイサイト質溶岩からなリ、溶岩ドームを形成している。その年代値が10~12万年前ということで、マグマがまだ冷えきっていないと考えられ、下呂温泉の熱源になっている可能性が高いとされている。山腹に見られる崩壊部はそこに湯ヶ峰断層が通っており、それにより崩されやすくなっていることで形成されたものである。
ジオの視点    マグマに最も多く含まれる成分は珪酸(SiO2)であり、その量が多いとマグマの液体の粘性が高くなり、溶岩は流れにくくなる。湯ヶ峰火山をもたらしたマグマはデイサイト質であり、最も珪酸分を多く含む流紋岩質の次に多い組成を示すもので、粘り気がかなり高い溶岩を噴出したことになる。そのため火口から流れ下るようなことはせず、火口付近にとどまったまま固結して溶岩ドームを作り、きわめて小さい火山体を作っただけで活動を終わった。
写真 下呂駅南方の六見橋付近から望む湯ヶ峰火山
(撮影:小井土由光)
写真 湯ヶ峰火山の崩壊壁
(撮影:小井土由光)
湯ヶ峰断層
湯ヶ峰断層は阿寺断層系の1つで、下呂市御厩野(みまやの)付近から乗政三ツ石、湯ヶ峰を経て、下呂温泉の北方へ向かって全長約10kmにわたり延びる。三ツ石は南西へ向って緩く傾いた段丘面の上にあり、その南西部に北西~南東方向に延びる高さ2~3mの直線状の低断層崖が谷の上流側に向いてある。ここで1986(昭61)年にトレンチ調査が行われ、トレンチ面にはその南西側に基盤の濃飛流紋岩が、北東側に上流や断層崖から供給された砂礫層がそれぞれみられ、南西側が明瞭に隆起していた。この調査で、約7,000年前以降に少なくとも4回以上の断層活動があり、最新の活動は約3100年前以降であることがわかった。さらに1990年のトレンチ調査では約1,000年前以降に活動したことが明らかにされ、1583(天正13)年の天正地震により崩壊したとされる大威徳寺(だいいとくじ)が南東へ数km離れた場所にあり、この断層が活動した可能性も考えられる。
下呂温泉
江戸時代初期に儒学者林 羅山が有馬温泉、草津温泉とともに日本三名泉に数えたことで知られる温泉であり、そのおもな泉源が濃飛流紋岩の中を通るが阿寺断層系の下呂断層に沿って分布している。下呂断層や湯ヶ峰断層などの阿寺断層系の断層沿いに形成された破砕帯などから地下へしみ込んだ地下水が、湯ヶ峰火山のマグマ溜りで温められ、下呂断層の破砕帯に沿って形成された飛騨川の低所に湧き出していると考えられている。



地質年代