項目 手取層群の泥岩層 てとりそうぐんのでいがんそう
関連項目 事項解説>化石>手取層群の化石>アンモナイト(手取層群)
地点 高山市荘川町御手洗(みたらい)
見学地点の位置・概要    国道156・158号(重複区間)がひるがの高原から御手洗川に沿って荘川方面へ下っていき、その最初にある集落が御手洗地区である。そのすぐ手前のカーブに幅広い待避所が設置されており、その反対側の山側に国道より一段高く平坦地がある。全体に草に覆われて上り口がわかりにくくなっているが、わずかに残されている踏み跡をたよりにそこへ上ると、黒色の泥岩層からなる小丘が露出している。
見学地点の解説    この泥岩層は当初、ジュラ紀中期の地層と考えられていたが、ジュラ紀後期から白亜紀前期(1億5,000万年~1億4,000万年前)を特徴づけるアンモナイトが産出したことで、ほぼ白亜紀前期に形成された石徹白亜層群相当層に属する地層と考えられるようになった。アンモナイトのほかに、ベレムナイト、二枚貝、生痕などの化石を産出しており、時間をかけて探せばこれらの化石が見つけられる可能性がある。泥岩からなる小丘からさらに奥(東)へ山際まで進むと、北西へ20°ほど傾いた細粒砂岩層の地層面が露出しており、そこにリップルマーク(漣痕)と呼ばれる模様がみられる。これは水が流れることで地層の堆積面に作られた周期的な波状の模様であり、水深が浅い場所に堆積した地層であることを示している。ただし、この地層面は山側の斜面から運び出された土砂で埋没している場合もある。
ジオの視点    アンモナイトは巻貝の形態をもつ中生代を代表する頭足類の化石としてよく知られており、殻の巻き方などのいろいろな特徴から時代決定に有効な示準化石としてきわめて重要な生物群となっている。ここ以外で県内の手取層群からジュラ紀後期から白亜紀前期を特徴づけるアンモナイトは飛騨市古川町地域に分布する地層から産出している。
写真 荘川町御手洗に露出する手取層群の泥岩層
(撮影:小井土由光)
写真 荘川町御手洗に露出する手取層群にみられるリップルマーク(漣痕)
(撮影:小井土由光)
アンモナイト
現生のオオムガイに似ていることで、巻貝の形態をもつ中生代を代表する頭足類の化石としてよく知られている。ただし、生息期間は長く、古生代シルル紀末期(あるいはデボン紀中期)から中生代白亜紀末まで海洋に広く分布し繁栄した。詳細に進化の過程がわかっており、殻の巻き方、殻内部の隔壁、殻表面に見られる縫合線など、いろいろな特徴から時代決定に有効な示準化石としてきわめて重要な生物群となっている。岐阜県地域では、高山市荘川町御手洗付近に分布する手取層群の御手洗層と呼ばれる地層からいくつかの産出が知られている。御手洗層は当初、ジュラ紀中期の九頭竜亜層群に属すると考えられていたが、ジュラ紀後期から白亜紀前期(1億5,000万年~1億4,000 万年前)を特徴づけるアンモナイトが産出したことで、ほぼ白亜紀前期に形成された石徹白亜層群相当層に属する地層と考えられるようになった。
石徹白亜層群相当層
手取層群を形成時期で区分した場合の中部層にあたり、中生代白亜紀前期の前半にあたる時期に形成された地層群である。海成層と陸成層が繰り返されながら、やがて陸成層が卓越していくような堆積環境の変遷がみられる。岐阜県内においては、高山市荘川町の尾神郷(おがみごう)川下流地域および御手洗川地域や白川村の白山(標高2702m)東麓地域で比較的広く分布し、かつては九頭竜亜層群とされ、岐阜県の天然記念物「牛丸ジュラ紀化石」を含む牛丸層やアンモナイト化石を産する海成層(御手洗層など)などがここに分布する。また、飛騨市河合町・古川町から高山市国府町・上宝(かみたから)町へかけての地域にも帯状に分布し、さらには高山市奥飛騨温泉郷栃尾地域にも分布する。
ベレムナイト
長円錐状の細長い鞘(さや)をもつ化石で、軟体動物のイカ・タコなどの仲間である頭足類に属し、鏃(やじり)のような形状に由来して、ギリシャ語で鏃を意味する言葉から名づけられ、日本語では「矢石(やいし)類」とも呼ばれる。アンモナイト、イノセラムス、トリゴニアなどとともに中生代を代表する化石であり、白亜紀末に絶滅した。岐阜県内では手取層群の石徹白亜層群相当層から産出している。
示準化石
地質時代を特定できる化石のことで、標準化石ともいう。こうした化石となる条件には、個体数が多いこと、地理的な分布が広いこと、特定の形態をもった状態での生存期間が短いことなどが挙げられ、一般には同一系統内では分類単位が大きいほど特定できる時間の幅が長くなる。こうした化石が含まれることで、離れた地域の間で地層の対比と時間の同定が可能となり、「地層同定の法則」が成り立つ。

地質年代