項目 福島谷花崗岩 ふくしまだにかこうがん
関連項目 凡例解説>濃飛期火成岩類>第2期火成岩類(花崗岩類)>福島谷花崗岩
地点 大野郡白川村福島谷
見学地点の位置・概要    国道156号は御母衣(みぼろ)湖西岸の断崖を縫うように走り、とりわけ支流の尾神郷(おがみごう)川と福島谷との間では狭いトンネルやロックシェッドが連続するように走っており、交通の難所がいくつもある。そのうち福島谷の南側では、福島保木トンネルが貫かれたことで難所が幾分和らげられるようになった。その北側出口の福島谷に御母衣第二発電所が地下発電所としてあり、そのトンネル入口だけが国道からみえる。その前の広場の下を流れる福島谷の河床へ国道脇の待避所から小道を下りると福島谷花崗岩が露出している。
見学地点の解説    福島谷花崗岩は粗粒の黒雲母花崗岩からなるが、花崗斑岩に近い岩相をともなうことが多く、その基質部がピンク色を呈したり、風化して茶褐色になることから、全体に赤褐色をなす岩石として露出している。この福島谷入口付近は御母衣ダムのロックフィル用石材の原石山としてこの花崗岩が採掘された場所であり、上流側正面の奥に見られる大きな岩壁がその採掘跡である。岩体の南側に分布する濃飛流紋岩に熱変成作用を与えており、濃飛流紋岩を覆って分布する庄川火山-深成複合岩体シツ谷層には熱変成作用を与えていない。なお、この福島谷の上流には、約1億年前という年代値を示し、手取層群の形成後、濃飛流紋岩の形成前という時期に活動した火成岩類として北俣谷閃緑岩が分布しており、それが福島谷花崗岩とはまったく異なる優黒色の粗粒な深成岩として谷の中に転がっている。
ジオの視点    御母衣湖周辺からその下流の庄川流域に分布する火成岩類は、当初、濃飛流紋岩とそれを貫く白川花崗岩類という単純な構成で考えられていた。しかし、詳しい地質調査の結果、約1億年前に形成された北俣谷閃緑岩から始まり、約7,500万年前に形成された濃飛流紋岩のNOHI-3に属する火山岩類、約6,500万年前に形成された福島谷花崗岩、その直後から約5,400万年前に形成された庄川火山-深成複合岩体と、かなり複雑な火成活動史が明らかにされるようになった。
写真 福島谷に露出する福島谷花崗岩
(撮影:小井土由光)
写真 福島谷の河床に転がっている北俣谷閃緑岩の礫
(撮影:小井土由光)
庄川火山-深成複合岩体
岐阜県北西部の庄川上流域に約40km×25kmの規模で分布する火山岩類と花崗岩類は、濃飛流紋岩および関連する花崗岩類よりも新しい時期に形成されたものであることが明らかにされ、それらを庄川火山-深成複合岩体と命名して濃飛流紋岩と区別して扱うようになった。ただし、まだ全体にわたる詳細な調査・検討がなされていないため、とくに火山岩類についてはおもに分布域の南部において層序区分がなされているだけであり、それ以外の地域では「未区分火山岩類(S0)」としてある。区分された火山岩類は、下位から、六厩川層、大原谷溶結凝灰岩層、シツ谷層、金谷溶結凝灰岩層、なお谷層、宮谷溶結凝灰岩層に分けられており、前三者が「庄川コールドロン」と呼ばれるコールドロンの外側ユニット(コールドロン外ユニット)を、後三者がコールドロンの内側ユニット(コールドロン内ユニット)をそれぞれ構成している。貫入岩類は、花崗岩ユニットとしてコールドロンの内部および縁辺部を貫いており、それらの産状や岩相上の特徴などから、落部川文象斑岩、白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)、御母衣環状岩脈の3種類に分けられる。
シツ谷層
庄川火山-深成複合岩体のコールドロン外ユニットの上部層をなし、御母衣湖東岸地域からその北方の森茂(もりも)川流域や御前岳(標高1816m)周辺地域、御母衣湖西岸地域からその北方の大白川下流域へかけての地域に広く分布する。最大層厚が1,000m以上あり、下部は流紋岩質の火山礫凝灰岩や結晶凝灰岩などの火山砕屑岩層からなり、上部は火山礫凝灰岩を主体として、高マグネシウム安山岩の溶岩や砕屑岩類を挟み、下位層である大原谷溶結凝灰岩層の巨大ブロックを多量に含むとともに、石英斑岩や文象斑岩がシート状に貫いている。北俣谷閃緑岩、福島谷・秋町花崗岩、大原谷溶結凝灰岩層を覆い、白川花崗岩類(御母衣岩体)に貫かれる。
北俣谷閃緑岩
御母衣(みぼろ)湖西岸の北俣谷中流域およびその西方のアワラ谷下流域に分布し、石英モンゾ閃緑岩~ハンレイ岩からなる。ほぼ1億年前の形成年代を示し、先濃飛安山岩類を貫き、庄川火山-深成複合岩体の火山岩類に不整合に覆われる。アワラ谷中~上流域からその南方にかけて分布するアワラ谷花崗閃緑岩と異なる岩相を示すが、ほぼ同じ形成年代を示し、一続きの岩体と考えられている。


地質年代