項目 御母衣ダム(御母衣電力館) みぼろだむ
関連項目 事項解説>大型土木構造物>ダム>御母衣ダム
地点 大野郡白川村牧 御母衣電力館
見学地点の位置・概要    御母衣ダム堤体の上端とほぼ同じ高さにあった国道156号は、北へ向かって長い下り坂のトンネルやヘアピンカーブなどで庄川の河床付近まで下っていく。ダム堤体の正面にあたる位置に最後の大きなカーブがあり、そこに銀色の半カマボコ型の屋根をもつ御母衣電力館がある。
見学地点の解説    御母衣電力館は、御母衣ダムの建設にまつわる歴史や発電所の仕組みをわかりやすく紹介している施設であり、日本最初の大型ロックフィル型ダムの堤体を下流側から真正面に眺められる位置に建てられている。御母衣ダムは、活断層という認識がなかった時代に建設されたこともあり、堤体の右岸(東岸)寄りの位置に御母衣断層が庄川沿いに走っている。堤体の材料として、上流約2km左岸(西岸)に分布する福島谷花崗岩をロック材料に、同約3km右岸(東岸)に分布する秋町花崗岩の風化部を土質遮水壁材料にしており、それらの岩石研磨面が御母衣電力館に展示されている。また、御母衣電力館の駐車場からは庄川対岸に白色をなして大きく崩壊した崖として御母衣断層の破砕帯が見え、そこでは庄川火山-深成複合岩体を構成する御母衣環状岩脈が激しく破砕されている。
ジオの視点    御母衣ダムは庄川にある水力発電専用のダムで、堤体設置予定地に存在した断層破砕帯(御母衣断層)の分布や性状が確認されたこと、ダム近傍から建設材料が得られることから、当初計画されていたダム型式をロックフィル型に変更して建設された。
写真 御母衣電力館の入口付近からみた御母衣ダムの堰堤
(撮影:小井土由光)
写真 御母衣電力館の駐車場からみた御母衣断層の破砕帯
(撮影:小井土由光)
御母衣断層
御母衣断層は、御母衣断層系の中心をなす断層で全長約24kmにわたり延びる。地形からみると左横ずれ断層で、西側が隆起する傾向にある。白川村木谷において庄川東岸にある河岸段丘面を横切っており、その西側(川側)を約3.4m隆起させて低断層崖を形成している。1990(平2)年にこの断層崖においてトレンチ調査が実施され、この断層が逆断層であり、7,700年前以降と約2,500年前以降の少なくとも2回にわたる断層活動の跡が確認された。後者には、約400年前の天正地震(1586年)をもたらした断層の活動が含まれることになるが、時間幅がかなり大きいために特定できるような年代値とはなっていない。とはいえ、全体として現在も活発に活動しており、地震を発生する危険度の高い活断層であることは明確となっている。
福島谷花崗岩
御母衣湖の西岸にある福島谷入口付近に分布し、優白質の粗粒黒雲母花崗岩からなり、花崗斑岩に近い岩相をともなう。濃飛流紋岩のNOHI-3を構成する下呂火山灰流シートを貫き、それに熱変成作用を与えているが、庄川火山-深成複合岩体のシツ谷層に不整合に覆われ、それに礫として含まれる。御母衣湖の対岸にあたる森茂(もりも)川合流部付近に分布する秋町花崗岩は、庄川に沿って走る御母衣断層により切断されたように分布しているが、本来は一連の岩体であると考えられている。
秋町花崗岩
御母衣湖の東岸において森茂(もりも)川合流部付近に分布し、庄川沿いに通る御母衣断層により切断されたように分布しているが、対岸に分布する福島谷花崗岩とは本来は一連の岩体であると考えられている。福島谷花崗岩と似た岩相をもち、優白質の粗粒黒雲母花崗岩からなる。また、庄川火山-深成複合岩体のシツ谷層に不整合に覆われ、それに礫として含まれる。
庄川火山-深成複合岩体
岐阜県北西部の庄川上流域に約40km×25kmの規模で分布する火山岩類と花崗岩類は、濃飛流紋岩および関連する花崗岩類よりも新しい時期に形成されたものであることが明らかにされ、それらを庄川火山-深成複合岩体と命名して濃飛流紋岩と区別して扱うようになった。ただし、まだ全体にわたる詳細な調査・検討がなされていないため、とくに火山岩類についてはおもに分布域の南部において層序区分がなされているだけであり、それ以外の地域では「未区分火山岩類(S0)」としてある。区分された火山岩類は、下位から、六厩川層、大原谷溶結凝灰岩層、シツ谷層、金谷溶結凝灰岩層、なお谷層、宮谷溶結凝灰岩層に分けられており、前三者が「庄川コールドロン」と呼ばれるコールドロンの外側ユニット(コールドロン外ユニット)を、後三者がコールドロンの内側ユニット(コールドロン内ユニット)をそれぞれ構成している。貫入岩類は、花崗岩ユニットとしてコールドロンの内部および縁辺部を貫いており、それらの産状や岩相上の特徴などから、落部川文象斑岩、白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)、御母衣環状岩脈の3種類に分けられる。
御母衣環状岩脈
庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、大白川下流域から庄川東岸域を経て、御前岳(標高1816m)周辺地域へかけて、庄川コールドロンを縁どるように南へ膨らんだ半円弧状をなして最大幅約1.5kmで断続的に分布し、さらにその北方延長上の猿ヶ野馬場山(さるがばんばやま)(標高1827m)から木滝谷へかけての地域や大白川下流域から北方へかけて庄川西岸域の山腹にも岩脈として分布する。岩体の中心部は完晶質の角閃石黒雲母花崗閃緑岩からなり、周縁部では斑岩状となる。周囲の火山岩類へは高角度で貫入しており、熱変成作用の及んでいる範囲は狭い。
地質年代