項目 平瀬鉱山跡 ひらせこうざんあと
関連項目 事項解説>鉱山跡・資源>金属資源>平瀬鉱山
地点 大野郡白川村長瀬
見学地点の位置・概要    国道156号は白川村平瀬ではバイパスとなって平瀬温泉街の山側を抜けて富山方面へ向かうが、庄川支流の大白川を渡ってすぐに旧道で温泉街へ入ると、600mほどで庄川対岸へ渡る稗田橋へ向かうT字路がある。稗田橋を渡り、左方へ曲がってすぐ右側にコンクリート製の湧水桶があり、その奥に高さ2mほどの石垣がある。ここが平瀬鉱山の坑口跡である。道路からは見えないが、ここより北側の山腹斜面にはいくつかの平坦地があり、そこには樹木や雑草が生い茂っているが、おそらく鉱山施設があった場所であったと想像される。
見学地点の解説    平瀬鉱山は、かつて白川村地域で十数ヵ所もあったとされるモリブデン鉱山の中で最大規模の鉱山であった。現在では坑口跡だけが残されているだけで、鉱山の様子がわかるものは何もない。周辺には鉱山から掘り出されたズリ石が転がっているものと思われるが、草木に覆われていることもあり、その兆候はほとんど感じられない。採掘されていた鉱石は、MoS2という化学組成をもつ輝水鉛鉱で、銀色で六角板状の軟らかい鉱物である。そこから得られるモリブデンという元素は鉄に加えて融点が高い特殊鋼に用いたり、薬品原料などに利用されている。
ジオの視点    平瀬鉱山は、庄川火山-深成複合岩体を構成する白川花崗岩(平瀬岩体)の中に胚胎した高温の鉱脈型鉱床で、輝水鉛鉱をともなう石英脈を稼行対象とした鉱山であった。鉱石品位は平均0.2~0.5%MoS2で低いが、10%に達するようなこともあり、古くから日本有数のモリブデン鉱床として知られてきた。1911(明44)年に発見され、1941(昭16)年から本格的な開発がなされ、1966(昭41)年に閉山した。
写真 平瀬鉱山の坑口跡
(撮影:小井土由光)
庄川火山-深成複合岩体
岐阜県北西部の庄川上流域に約40km×25kmの規模で分布する火山岩類と花崗岩類は、濃飛流紋岩および関連する花崗岩類よりも新しい時期に形成されたものであることが明らかにされ、それらを庄川火山-深成複合岩体と命名して濃飛流紋岩と区別して扱うようになった。ただし、まだ全体にわたる詳細な調査・検討がなされていないため、とくに火山岩類についてはおもに分布域の南部において層序区分がなされているだけであり、それ以外の地域では「未区分火山岩類(S0)」としてある。区分された火山岩類は、下位から、六厩川層、大原谷溶結凝灰岩層、シツ谷層、金谷溶結凝灰岩層、なお谷層、宮谷溶結凝灰岩層に分けられており、前三者が「庄川コールドロン」と呼ばれるコールドロンの外側ユニット(コールドロン外ユニット)を、後三者がコールドロンの内側ユニット(コールドロン内ユニット)をそれぞれ構成している。貫入岩類は、花崗岩ユニットとしてコールドロンの内部および縁辺部を貫いており、それらの産状や岩相上の特徴などから、落部川文象斑岩、白川花崗岩類(鳩ヶ谷・平瀬・森茂岩体)、御母衣環状岩脈の3種類に分けられる。
白川花崗岩(平瀬岩体)
庄川火山-深成複合岩体の花崗岩ユニットの一つをなし、庄川沿いの低地に一連の岩体として分布する。おおよそ南半部に分布する平瀬岩体は約2×4kmの規模で、北半部に分布する鳩ヶ谷岩体は約4×10kmの規模でそれぞれ分布する。平瀬岩体全域と鳩ヶ谷岩体の中央部は中~細粒あるいは中~粗粒の黒雲母花崗岩からなり、鳩ヶ谷岩体の西部はこれに角閃石が含まれるようになり、同岩体の北部は角閃石黒雲母花崗閃緑岩~トーナル岩からなる。コールドロン内ユニットを貫いて強い熱変成作用を与え、その貫入接触面は一般にかなり低角度であり、浅所へ迸入した岩体の天井部分が露出している。
鉱脈型鉱床
熱水鉱床の一つで、熱水(鉱液)が地下の割れ目や断層に沿って流れる過程で温度や圧力の低下などにより含まれていた成分が岩石の割れ目に結晶化して鉱脈状に産するもので、鉱脈はおもに石英などの普通の鉱物からなるが、金属鉱物や希少鉱物を含むことで鉱床となる。深さにより浅熱水性-中熱水性-深熱水性鉱床のように分けられることが多い。充填鉱床という場合もある。


地質年代