項目 見座礫層 みざれきそう
関連項目 凡例解説>第四紀堆積層>高山盆地周辺地域>見座礫層
地点 高山市久々野町小屋名(こやな)
見学地点の位置・概要    国道361号(美女街道)は、大西山地を貫く飛騨ふる里トンネルの南側出口から350mほどの位置で緩やかに右カーブをしていく。その途中で左折する細い道があるが、その道はすぐに「通行止」の標識とガードレールで塞がれている。そのガードレールのすぐ左手上方に見座礫層が露出している。
見学地点の解説    よく円摩された10~30cmほどの大礫を多く含み、それらの間を多量の細かい礫あるいは砂粒が埋めた基質部をもつ河川堆積物である。大礫は濃飛流紋岩と安山岩類であり、それらより小さい礫も同様であるが、美濃帯堆積岩類の砂岩やチャートも含まれている。それらの多くは風化のすすんだ軟らかい礫となっている。礫層が露出している崖には季節によりヤブをかき分けて登らなければならないが、道路からも礫層の状況はおおよそ把握でき、大礫も道路上に崖から落ちてきており、それらで軟らかくなった礫の状態が観察できる。なお、ここではわからないが、この礫層の上位には久々野凝灰角礫岩層が覆っており、その様子は宮峠断層の位置にある解説案内板の写真に示されている。
ジオの視点    見座礫層は、断層運動により位山分水嶺(大西山地)が上昇隆起したために南流を始めた飛騨川の河川堆積物であり、その分布は宮峠断層よりも南側に限られる。実際には、高山市朝日町万石(まんごく)付近から現飛騨川の北側(大西山地南麓)に沿って久々野町山梨から無数河(むすご)付近までほぼ連続して分布し、礫径は西方(下流)へ向かって小さくなる。したがって、その当時の飛騨川は現在よりも北側の位置を流れてから南下を始めていたことになる。
写真 国道361号(美女街道)沿いにみられる見座礫層
(撮影:小井土由光)
写真 見座礫層に含まれる大礫
(撮影:小井土由光)
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
久々野凝灰角礫岩層
すぐ下位にある見座礫層とほぼ同じ分布域を示し、位山分水嶺形成後に現在よりも北側の位置を流れて南流した飛騨川に沿って堆積したもので、約10mの層厚で上流へ向かって標高が高くなる平坦な地形面を形成している。安山岩質の凝灰角礫岩からなり、丹生川火砕流堆積物、美濃帯堆積岩類、濃飛流紋岩などの亜角礫~円礫を含む。安山岩礫の起源や運搬過程についてはわかっていない。



地質年代