項目 下島温泉 したじまおんせん
関連項目 事項解説>温泉・地下水>飛騨地域>下島温泉
地点 下呂市小坂町落合下島
見学地点の位置・概要    飛騨小坂の町から小坂川に沿って走る県道437号湯屋温泉線は小坂町落合で南下して湯屋温泉へ向かうが、そこから県道441号落合飛騨小坂停車場線が小黒川に沿って御嶽山方面へ向かう。437号線と分かれてすぐに巌立峡方面への案内指示があり、それにしたがって濁河川(にごりごがわ)沿いに800mほど進むと下島温泉「ひめしゃがの湯」に着く。
見学地点の解説    下島温泉は300年以上の歴史があり、傷に対する効能が高い「傷湯」の異名を持つ湯治場であった。公営の日帰り温泉施設「ひめしゃがの湯」の入口脇に飲泉場があり、遊離炭酸を多く含む炭酸泉の源泉を自由に飲めるようになっているが、えぐ味があり、あまり飲みやすいとは言えない。この施設への進入口に旧御嶽山登山道1合目にあたる「一之鳥居」があり、そこに御嶽火山から流れ下った溶岩流の末端であることを示す掲示板が立てられている。この溶岩は巌立の大岩壁を作っている溶岩と同じものであり、そこからさらに約1km流れ下ったこの位置が現在残されている溶岩の分布の最西端ということになる。
ジオの視点    下島温泉は、御嶽火山の溶岩流末端にあるとはいえ、その溶岩流は火山体本体からかなりの距離を流れ下った先であり、火山活動の場からかなり離れた基盤岩類(濃飛流紋岩)の中から湧出している。同じ泉質の炭酸泉を湧出している湯屋温泉が尾根一つ隔てて南西に1.2kmほど離れた位置にあり、これも濃飛流紋岩中の断層等に沿って湧出している地下水である。いずれも御嶽火山の活動との直接的な関係は考えにくい。ただし、豊富に含まれる炭酸ガスの起源についてはよくわからない。
写真 下島温泉「ひめしゃがの湯」にある源泉の飲泉場
(撮影:小井土由光)
写真 下島温泉「ひめしゃがの湯」への進入路にある御嶽火山の溶岩の末端を示す案内掲示
(撮影:小井土由光)
巌立
御嶽山の西側斜面を流れ下る濁河(にごりご)川と椹(さわら)谷の合流点にある高さ約72m、幅約120mの大岩壁である。御嶽火山噴出物のうち新期御嶽火山を構成する摩利支天火山群に属する噴出物で、約54,000年前に約17km流れ下った安山岩質の溶岩流の末端部にあたる。岩壁は、溶岩が冷えて固まったときにできる柱状節理からなり、太さ数十cmの柱が並んでいるように見える。付近一帯は巌立峡と呼ばれ、三ツ滝など数多くの滝をもつ峡谷として知られている。
湯屋温泉
濃飛流紋岩のNOHI-3に属する下呂火山灰流シート内にあり、おそらく北東~南西方向に延びる断層沿いに湧出していると考えられる。別名「サイダー泉」と呼ばれるほど炭酸泉としての特徴をもち、飲用することで胃腸病によく効くとされ、県内で最初に飲用許可が出た温泉でもある。炭酸泉は火山活動の末期にみられることがあるとされるが、御嶽火山との直接的な関係はない。鉄分を含むことで、空気に触れて赤褐色を呈する。北東側の尾根を隔てた反対側にほぼ同じ地質環境・泉質をもつ下島(したじま)温泉がある。



地質年代