平湯温泉
焼岳火山群としては比較的新しい時期に活動しているアカンダナ火山の西麓にあり、同火山を熱源としている温泉の可能性もあるが、現在活動中の焼岳火山を熱源としている可能性もある。地下でどのようにつながっているかはわからない。戦国時代の開湯伝説があり、奥飛騨温泉郷の中でも最も歴史の古い温泉とされている。なお、平湯温泉発祥の地は、温泉街中心から東方1kmほどのところにある“神の湯”という露天風呂である。
乗鞍火山
飛騨山脈に沿ってほぼ南北方向に配列する乗鞍火山列あるいは乗鞍火山帯と呼ばれる火山群の一つで、複数の火山体が集まって復元総噴出量約26km3の複合火山を形成している。活動時期から大きく約128万~86万年前に活動した古期乗鞍火山と約32万年前以降に活動した新期乗鞍火山に分けられており、前者には千町火山が、後者には烏帽子火山、高天ヶ原・権現池火山、四ツ岳火山、恵比寿火山がそれぞれ該当している。これらのうち権現池火山だけが最新の活動をしている。全体に火砕流堆積物や降下火砕堆積物などの火砕物が少なく、安山岩質ないしデイサイト質の厚い溶岩流が主体を占めることで特徴付けられ、基盤岩類の分布高度が標高2400mまで確認され、噴出物の厚さは600~700mほどしかない。
四ツ岳火山
乗鞍火山のうち新期乗鞍火山の初期に活動した烏帽子火山が浸食され、火山体が崩壊した後に形成された凹地を埋めて恵比寿火山とともに活動した火山で、四ツ岳溶岩ドームを構成し、そこから北方へ向かって平湯大滝付近まで流出した四ツ岳溶岩(体積約0.26km3)からなる火山体である。角閃石と輝石類を含む安山岩質の溶岩流からなる。
美濃帯堆積岩類
美濃帯は、飛騨外縁帯の南側にあってかなり幅広く分布する地質帯で、岐阜県内でも広範囲にわたる地域を占める。そこは、古生代石炭紀から中生代白亜紀最前期にかけての時期にチャート・石灰岩・砂岩・泥岩・礫岩などの海底に堆積した堆積岩類と海底に噴出した緑色岩(玄武岩質火山岩類)でおもに構成されている。下図に示すように、海洋プレートの上に噴出した海洋プレートの上に噴出した玄武岩質火山岩類は海底や火山島(海山)を形成して、その上にチャートや石灰岩・珪質泥岩などを徐々に堆積させながら大陸へ向かって年間数cmほどの速さで移動していく。海洋プレートは海溝部で大陸の下へ沈み込んでいくが、堆積物はいっしょに沈み込むことができず、はぎ取られたり、大陸側から運び込まれた砂岩・泥岩などとともに大陸側へ押し付けられ、混じり合って複合体(コンプレックス)を作りあげていく。こうした作用を付加作用といい、それにより形成された堆積物は付加体堆積物と呼ばれ、これまでそれらを総称して「美濃帯中・古生層」、「美濃帯中生層」、「美濃帯堆積岩コンプレックス」などといろいろな表現で呼ばれてきたが、ここではこれらを「美濃帯堆積岩類」と呼ぶ。それらは、それまで順に重なっていた地層が付加作用にともなって低角の断層を境にして屋根瓦のように繰り返して覆うように重なったり、複雑に混じりあったメランジュと呼ばれる地質体を構成し、整然とした地層として順番に連続して重なるようなことがほとんどない。そのため全域にわたり個々の地層名を付して表現することがむずかしいため、ここでは構成岩石の種類(岩相)によって表現する。これらの構成岩石は単独でも複数の組合せでもある程度の大きさを持つ地質体を形成しており、その大きさはcmオーダーの礫からkmオーダーの岩体までさまざまである。これらは岩相、形成時期、形成過程などの類似性から複数の地質ユニットに区分され、ユニット間は衝上断層で接することが多いが、その区分による表現はここでは用いない。
御嶽火山
岐阜・長野県境にあって南北約20km、東西約15kmの範囲に広がる山体をなす。それぞれ数万年ほどの活動期間をもつ古期御嶽火山と新期御嶽火山からなり、両者の間に約30万年にわたる静穏期があり、現在も約3万年にわたる静穏期にあたっている。
仙人滝
御嶽山の飛騨側登山口にあたる濁河温泉から登山道を500mほど登ったところにある落差約30m、幅約5mの瀑布で、新期御嶽火山を構成する摩利支天火山群(約6万~2万年前)に属する溶岩流に架かる。滝壷が比較的浅く、御嶽行者の禊の場であった滝であり、名前の由来にもなっている。200以上もあるとされる小坂町地域の滝の中で古くから知られている名瀑の一つである。
根尾の滝
飛騨川支流の小坂川の上流にあたる濁河川にある落差約63m、幅約5mの名瀑で、御嶽山の山麓にある多くの滝の中でも規模の大きい滝として知られている。新期御嶽火山を構成する摩利支天火山群(約6万~2万年前)に属する溶岩流に架かる。この溶岩流はさらに下流まで流れて巌立の岩壁を形成している。
地質年代