項目 飛騨・北アルプス自然文化センター ひだ・きたあるぷすしぜんぶんかせんたー
関連項目 事項解説>地学関連施設>飛騨・北アルプス自然文化センター
地点 高山市奥飛騨温泉郷平湯763-12
見学地点の位置・概要    国道471号および安房トンネル道路と分かれる平湯IC口の交差点から国道158号を北へ500mほど行くと平湯バスターミナルがある。その手前の左側に平屋建ての飛騨・北アルプス自然文化センターがあり、国道にも案内指示がある。
見学地点の解説    この施設には大きく2つの展示室があり、飛騨山脈(北アルプス)周辺の自然を中心に解説展示がなされている。それらのうち第1展示室に北アルプス地域の地質に関する解説展示がなされている。飛騨帯・飛騨外縁帯・美濃帯を構成する代表的な岩石、神岡鉱山の鉱石、この地域から産出する化石などの展示をはじめとして、焼岳火山に関する火山情報や温泉のしくみ、安房トンネル道路の概要など、ジオに関するさまざまな要素からなる北アルプス地域をわかりやすく紹介している。
ジオの視点    このセンターは、全国各地の国立公園や国定公園などにおいて、そこの地形・地質・生物などに関する情報を展示・解説して利用案内を行っているビジターセンターの1つで、飛騨山脈(北アルプス)周辺の自然と生活文化を展示・解説しており、とりわけ飛騨山脈のジオ(地形・地質・火山・温泉)に関する解説が丁寧になされている。
写真 飛騨・北アルプス自然文化センターの外観
(撮影:小井土由光)
写真 飛騨・北アルプス自然文化センターに展示されているパネルの例「北アルプスの生い立ちと化石」(手前のガラスケース内に産出化石の実物が展示されている)
(撮影:小井土由光)
安房トンネル
国道158号の安房峠は交通の要所でありながら難所であったため、トンネルで貫く工事が1983(昭58)年から始められ、12年かけて掘られた。このトンネルの特徴は焼岳火山群の1つであるアカンダナ火山の一角を貫いていることであり、湧水や高温熱水に阻まれながらの掘削工事であった。幸いにもトンネル掘削中は火山活動にかかわるような事故は起こらなかったが、完成直前に長野県側の取付け道路工事現場で水蒸気爆発が起こり、4名の犠牲者が出た。焼岳火山群の火山活動の一端に接近して、かなり危険な状況下でトンネル掘削が行なわれたと考えてよい。
神岡鉱山
鉱山の歴史は古く、採掘は奈良時代に始まる。1874(明7)年に当時の三井組が本格的な開発をはじめ、近代的な手法により大規模な採掘がなされ、約130年間の総採掘量は7,500万トンにも達している。一時は東洋一の鉱山として栄えたが、2001(平13)年6月に鉱石の採掘を中止した。飛騨帯構成岩類の飛騨変成岩類のうち、おもに結晶質石灰岩を火成岩起源の熱水が交代したスカルン鉱床を稼行対象とした鉱山で、栃洞(とちぼら)坑、茂住(もずみ)坑、円山(まるやま)坑などの鉱床がある。亜鉛鉱石の主要鉱物である閃亜鉛鉱に含まれるカドミウムを原因とする公害病「イタイイタイ病」が下流域の富山県神通川流域で大規模に発生したことはよく知られている。また、茂住坑の跡地はスーパーカミオカンデとしてニュートリノ観測装置に利用されている。なお、2007年に日本地質学会により「日本の地質百選」に選定されている。
焼岳火山
焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、その中で最も新しく、現在も活動中の火山である。焼岳(標高2455m)を中心として、いくつかの溶岩、溶岩ドームとそれらにともなわれる火砕岩類からなる。現在の山頂部を作る溶岩ドームは約2,300年前に形成されたものであり、その形成にともなって流出した中尾火砕流堆積物が山体の東~北斜面から、北側山麓の足洗谷に沿って蒲田川流域まで流下し、新穂高温泉の中尾地区がある中尾平を形成しており、最大径5mにもおよぶ発泡の悪い安山岩~デイサイト質の角~亜角礫と同質の基質からなるblock and ash flow堆積物である。歴史時代に入ってからの活動としては、1907(明40)年から1939(昭14)年まで水蒸気爆発が活発に繰り返され、特に1915(大4)年に水蒸気爆発にともない発生した泥流が梓川をせき止めて大正池を作ったことは有名である。最新の活動については事項解説『災害』の項目「焼岳火山1962年噴火」を参照のこと。


地質年代