項目 福地層 ふくちそう
関連項目 凡例解説>飛騨外縁帯構成岩類>槍ヶ岳付近~奥飛騨温泉郷地域>福地層
地点 高山市奥飛騨温泉郷福地 福地山登山道
見学地点の位置・概要    福地温泉内を貫いて走る市道において、福地化石館のある「昔ばなしの里」へ入っていく道路と反対側に福知山登山道の案内板があり、最初はコンクリートの石段から始まるが、すぐに整備された通常の登山道となる。登山道は急斜面をジグザグに登っていき、やや険しい道のりであるが、標高1,000~1,050mまで登ると(出発地点の標高は約950m)、その足元に福地層の石灰岩の岩塊が徐々に多く転がっていくようになる。
見学地点の解説    登山道に転がっている岩石の中でも細かい岩片は外部から持ち込んだ可能性が高いため、こぶし大~人頭大ぐらいの比較的大きなものに着目する必要がある。それらの多くは淡灰色、灰色、暗灰色の石灰岩・泥質石灰岩であり、黒色の泥岩・細粒砂岩も少ないが見られる。いずれも福地層を構成する岩石であり、石灰岩の表面を詳しくみるとサンゴなどの化石が含まれている場合がある。ただし、福地地域に露出している福地層を採取できる場所がかなり限られ、この登山道で得られる福地層ぐらいになっている。そのため化石を含む石灰岩はほとんど採取されてしまっていることから、化石採取はあまり期待できない。
ジオの視点    福地層は福地温泉の西側山地に広く分布し、この登山道もその分布域に沿って延びている。ほとんど石灰岩からなり、その中にハチノスサンゴなどのデボン紀を示す化石を含む地層として知られ、日本におけるデボン紀層を代表する地層となっている。ただし、この登山道の西側にあたるオソブ谷支谷の一の谷流域では、福地層に含まれる化石が国の天然記念物として地域指定されており、そこへの入山自体が禁止されていることで化石採集はできない。
写真 福地山登山道の入口
(撮影:小井土由光)
写真 福知山登山道で見られる福地層の石灰岩の岩塊
(撮影:小井土由光)
福地化石館
福地在住の故山腰 悟氏が1960年代から収集された福地地域の化石は、その一部が岐阜県指定の天然記念物「福地化石標本」にもなっており、私設博物館「ひだ自然館」に展示公開されていた。そこが2001(平13)年に閉館したため、貴重な化石類は当時の上宝(かみたから)村に寄贈され、それらを再展示している施設である。展示規模はかなり縮小されているが、散逸せずに保存されたことの意義は大きい。
ハチノスサンゴ
古生代のオルドビス紀後期からデボン紀中期にかけてだけ知られる示準化石で、とくにシルル紀とデボン紀には、層孔虫や四射サンゴなどとともに代表的造礁生物の一つとして繁栄し、示相化石としての価値も大きい。骨格は炭酸カルシウムからなり、一般に直径数cmから数十cm単位の群体を形成し、床板を密にもつ管状の個体と個体が連結して塊状の群体を形成し、各個体の断面が多角形で、全体として蜂の巣状を呈することで、ハチノスサンゴとも呼ばれる。岐阜県地域では、飛騨外縁帯構成岩類の福地層と林ノ平層から産出し、ともにデボン紀の地層である。



地質年代