項目 奥飛騨さぼう館 おくひださぼうかん
関連項目 事項解説>地学関連施設>奥飛騨さぼう館
地点 高山市奥飛騨温泉郷中尾2-34
見学地点の位置・概要    奥飛騨温泉郷栃尾で高原川に合流する蒲田(がまた)川に沿って北上する県道475号槍ヶ岳公園線は、蒲田トンネルを抜けるとすぐに中尾橋で蒲田川を渡る。そこから中尾温泉方面へ向かう交差点のすぐ北側に2階建ての奥飛騨さぼう館がある。なお、この施設は5~11月の期間限定で開館している。
見学地点の解説    この施設は1階・2階とも全体が展示スペースになっており、1階では土砂の移動・流出を防止して土砂災害を防ぐ砂防事業について、その役割や仕組みが模型やパネルで紹介されている。2階には、「奥飛騨のジオ(地形・地質)」として解説パネル・岩石標本が展示されているほか、「活火山焼岳コーナー」として火山災害とそれへの対策が解説され、中尾火砕流堆積物に含まれ、年代測定がなされた大きな樹木が展示されている。なお、天候条件に左右されるが、2階の窓から望遠鏡で槍ヶ岳が望めるようになっており、槍の穂先に登っている人のすがたが確認できる。
ジオの視点    飛騨山脈(北アルプス)は現在も激しく隆起している地域であり、それだけ削剥や崩壊も激しく進行している。削られたり崩壊した土砂は低い場所に移動することになるが、それが急激に起これば災害を引き起こすことになる。この地域ではそれが頻繁に起こっており、それを防ぐ砂防事業が盛んに行なわれてきた。この施設はそれらを紹介し、広報するために国土交通省北陸地方整備局神通川水系砂防事務所が設けたものである。
写真 奥飛騨さぼう館の外観
(撮影:小井土由光)
写真 奥飛騨さぼう館2階に展示されている中尾火砕流堆積物中から得られた樹木片(ガラスケース内を撮影)
(撮影:小井土由光)
中尾温泉
中尾温泉は、同じ奥飛騨温泉郷地域にある福地温泉や平湯温泉などとかなり異なり、温泉水が自然湧出したり、それをくみ上げているわけではなく、高温の水蒸気が湧出していることを特徴とし、それを利用して地表水を温めて温泉水として利用している。道路沿いに湯気が立ちのぼるタンク・水槽がいくつか見られるが、いずれもそこに高温の水蒸気の井戸があり、それを利用して温泉水を作りだしている場所である。比較的上流にあたる標高1,150m付近に京都大学防災研究所穂高砂防観測所があり、そのさらに200mほど奥では地熱開発用の大きな掘削井のやぐらが見られる。また、古くからある温泉宿にあたる施設あるいは温泉街が見られないことも福地温泉や平湯温泉と異なる特徴といえる。
中尾火砕流堆積物
焼岳火山群の新期焼岳火山群に属する火山体で、その中で最も新しく、現在も活動中の火山である。焼岳(標高2455m)を中心として、いくつかの溶岩、溶岩ドームとそれらにともなわれる火砕岩類からなる。現在の山頂部を作る溶岩ドームは約2,300年前に形成されたものであり、その形成にともなって流出した中尾火砕流堆積物が山体の東~北斜面から、北側山麓の足洗谷に沿って蒲田川流域まで流下し、新穂高温泉の中尾地区がある中尾平を形成しており、最大径5mにもおよぶ発泡の悪い安山岩~デイサイト質の角~亜角礫と同質の基質からなるblock and ash flow堆積物である。歴史時代に入ってからの活動としては、1907(明40)年から1939(昭14)年まで水蒸気爆発が活発に繰り返され、特に1915(大4)年に水蒸気爆発にともない発生した泥流が梓川をせき止めて大正池を作ったことは有名である。最新の活動については事項解説『災害』の項目「焼岳火山1962年噴火」を参照のこと。



地質年代