項目 苦鉄質貫入岩類 くてつしつかんにゅうがんるい
関連項目 凡例解説>飛騨外縁帯構成岩類>清見町楢谷地域>苦鉄質貫入岩類
地点 高山市清見町楢谷 一梨(ひとつなし)谷
見学地点の位置・概要    高山市三日町と郡上市八幡町を結ぶ郡上街道(愛称:飛騨せせらぎ街道)のほぼ中間点付近にある清見町大原(おっぱら)から北へ5kmほど離れた街道沿いに隣の集落である清見町楢谷がある。そこへ南西から流れ出る一梨谷が街道に沿って流れる馬瀬(まぜ)川に合流しており、その合流点にある大黒橋から一梨谷に沿って延びる林道を600mほど入った地点の道路脇に苦鉄質貫入岩類が露出している。
見学地点の解説    塊状の黒色緻密な岩石であり、細粒の基質中に最大で5mmほどの苦鉄質鉱物(おもに角閃石と輝石類)と斜長石を斑状に含むはんれい岩あるいは輝緑岩(火山岩における玄武岩に相当する岩石)からなる。かなり硬く、熱変成作用を受けて再結晶していると思われるが、その熱源については正確にはわかっていない。また、ここでは広域変成作用にともなわれる片理は弱く認められ、おおよそ北東~南西方向で北西へ65°ほど傾斜した片理面を示す。なお、周囲にはこの地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類の1つである林ノ平層が分布しているはずであるが、その露出は確認されていない。
ジオの視点    苦鉄質貫入岩類は、林ノ平層を岩脈状あるいは岩床状に貫いて分布し、広域変成作用を受けたはんれい岩あるいは輝緑岩からなる。ただし、その貫入時期は正確にはわかっていない。林ノ平層は約1,000mの厚さで、おもに泥岩、砂岩、流紋岩質凝灰岩からなり、厚さ数mの石灰岩をレンズ状にともなう。その石灰岩中に古生代デボン紀後期を示す造礁サンゴのファボシテス(ハチノスサンゴ)が含まれており、これが「清見層デボン紀化石」として岐阜県指定の天然記念物となっている。
写真 楢谷の一梨谷林道に露出している苦鉄質貫入岩類の露出面
(撮影:小井土由光)
写真 苦鉄質貫入岩類の破断面(苦鉄質鉱物(黒色)や斜長石(白色)が斑状に含まれている)
(撮影:小井土由光)
広域変成作用
構造運動により広い範囲にわたって既存の岩石が一連の温度・圧力条件のもとで変成作用を受けて変成岩を形成する作用で、低度のものから高度のものに累進的に変化することが多い。特定の火成岩を熱源とする局所変成作用(熱変成作用)と区別される。
片理
結晶片岩に特徴的に表れ、柱状、板状、鱗片状などの結晶が一定方向に並ぶことで生じる縞状(線状片理)あるいは面状(面状片理)に表れる構造。
ハチノスサンゴ
古生代のオルドビス紀後期からデボン紀中期にかけてだけ知られる示準化石で、とくにシルル紀とデボン紀には、層孔虫や四射サンゴなどとともに代表的造礁生物の一つとして繁栄し、示相化石としての価値も大きい。骨格は炭酸カルシウムからなり、一般に直径数cmから数十cm単位の群体を形成し、床板を密にもつ管状の個体と個体が連結して塊状の群体を形成し、各個体の断面が多角形で、全体として蜂の巣状を呈することで、ハチノスサンゴとも呼ばれる。岐阜県地域では、飛騨外縁帯構成岩類の福地層と林ノ平層から産出し、ともにデボン紀の地層である。
清見層デボン紀化石
清見町楢谷地域に分布する飛騨外縁帯構成岩類のうち林ノ平(はやしのひら)層と一梨(ひとつなし)含礫片岩をあわせて清見層群と呼び、それらのうち前者の石灰岩にから産出する古生代デボン紀の化石、とりわけ造礁サンゴとして径数~数十cmの大きさで群体を形成しているファボシテス(ハノスサンゴ)が指定されている。同じ飛騨外縁帯構成岩類である高山市奥飛騨温泉郷福地(ふくじ)地域の福地層とともに日本を代表するデボン紀化石の産地とされているが、実際には露出を確認できない状態にある。

地質年代